若手の職人が早くから腕を磨ける寿司屋
「鮨 銀座おのでら 登龍門」(以下「登龍門」)は、ONODERA GROUPが手がけている外食ブランド「銀座おのでら」の店舗の1つとして出店し、入社3年目の若手職人が寿司を握るだけでなく、立ち食いスタイルで高級寿司をリーズナブルに楽しめる場として注目を集めている。また「銀座おのでら」は2024年時点で銀座を本店に構え、世界3地域で19店舗を展開し、数々のミシュラン星付き店を輩出している。
寿司業界では、職人の育成に長い時間がかかることが課題となっていた。従来の徒弟制度では、長い下積み期間があり、約10年間の修行をしてはじめて「握り」がスタートするのが一般的だ。この過程の厳しさゆえに離職率が高く、職人育成が追いつかない状況が続いていた。
しかし、『登龍門』は入社3年目の若手職人が実際にカウンターに立ち、寿司を握ることができる環境を提供している。具体的には、新卒1年目は「追い回し」(雑務を担当し、常に追い回されるように作業することが由来)から経験し、2年目はカウンターで寿司職人をサポートする「手子(てこ)」(寿司職人の卵)を経験する。3年目からは、ONODERA GROUPの外食部門を率いる世界統括総料理長の坂上に選ばれた手子の3名が、登龍門に配属され、握り手となる。これにより、若手のモチベーションを高め、早い段階で実践経験を積ませることで成長を促進している。
提供されるネタは、近隣の高級店『鮨 銀座おのでら 総本店』と全く同じものであり、総本店では1人前27,500円の高級握りコースで使われるネタを、登龍門では約1/3~1/5の価格で楽しむことができる。『登龍門』がこのようにリーズナブルな価格で高級寿司を提供できる理由は、大きく分けて三つの理由がある。
まず、若手職人の育成を目的としているという点だ。価格設定には、若手職人が実践の場で技術を学ぶ「勉強代」という意味合いが含まれており、実践経験を積む場を提供され、そのコストは店舗側が負担している。これにより、通常の店舗では得られないような、早期の実践経験が若手に与えられる。また顧客はただ寿司を味わうだけでなく、若手職人が一人前に成長していく過程を間近で見守り、その成長に参加することができる。
次に、立ち食いスタイルとモバイルオーダーを導入していることだ。座席を設けないことで店舗の回転率が高まり、顧客がスマートフォンから注文を行うモバイルオーダー制によって、効率的なサービス提供が実現されている。この結果、約7,000円という客単価ながらも、想定以上の売上を達成している。また高い回転率によって、若手の職人が短期間で成長するための場数も提供できる。
最後に、店舗の地下に設けたセントラルキッチンの活用により効率化を図っていることだ。セントラルキッチンでは、総本店と同じネタを一括で仕入れ、総本店の分とまとめて仕込みを行うことで、作業の効率を大幅に向上させている。さらに、総本店と『登龍門』間でのネタの柔軟な活用が可能なため、フードロスをほぼゼロに抑えることができている。
さらに『登龍門』は、若手職人が技術を磨くだけでなく、接客や経営面の知識を学ぶ場としても機能している。仕入れや仕込み、営業、在庫管理など、経営者としての知識も身につけることで、職人としての「心技体」をバランス良く成長させることができる。若手職人は、銀座の厳しい客層を相手にしながら、技術だけでなく、ホスピタリティやサービスの質に対する「気付き」を学ぶことが求められており、これが一人前の板前になるための重要な要素とされている。
『登龍門』は、若手職人の育成を重視した人材システムの構築を目指しており、これまでに4名の卒業生が誕生し、総本店やニューヨーク店で活躍している。今後はランチタイムの営業も開始し、若手職人がさらに多くの実践経験を積む場を提供する計画が進められている。