採掘から修理・リサイクルまで、より公正なスマホを目指す
スマートフォン産業は、常に新製品を投入して短期間で買い替えを促す構造を持ってきた。その結果、寿命を迎える前に廃棄される端末が増え、世界中で大量の電子ゴミが生まれていた。また、製造の背景には採掘現場での児童労働や環境破壊、鉱物取引が武力紛争の資金源となる紛争鉱物問題など、人権や環境をめぐる深刻な課題が横たわっていた。こうした現実を前に、オランダのFairphone社が2013年に創業。単にスマートフォンを販売するのではなく、製品を通じて業界の仕組みそのものを変えようとする社会企業として歩みをはじめた。
「Fairphone」は、一般的なメーカーが性能や価格で競争するのに対し、製品を通じてサプライチェーンを公開し、公正な取引を経た電子機器を広げるためのムーブメントとして持続可能な仕組みを広げることを目的としている。スマホは収益源であると同時に、社会変革の実験台でもある。消費者がどんな価値にお金を払うのかを選べる市場をつくることが狙いだ。
特徴的なのは、長く使える設計。Fairphone 2以降は、壊れやすいディスプレイを工具なしで交換でき、カメラやスピーカーなどもドライバー1本で修理可能となった。さらに2017年には、カメラモジュールを後からアップグレードできる仕組みを導入し、「使い込むほどよくなるスマホ」という新しい発想を提示した。修理しながら5年間使い続けることでCO2排出量をおよそ3割削減できるという。
素材調達や製造工程の透明性も強みだ。Fairphoneは、錫すず・タンタル・タングステン・金といった紛争鉱物の追跡を可能にし、2016年には家電メーカーとして初めてフェアトレード認証の金を調達した。リサイクル由来の素材も積極的に採用している。さらに2018年には、公式サポートが終了していたFairphone 2に対しても、約50万ユーロを投じて独自にAndroid 7へのアップデートを行った。これは「売り切ったら終わり」ではなく、収益を製品の延命や社会的な価値づくりに使う姿勢を示すものだった。
こうした取り組みで、Fairphoneは不透明なサプライチェーンの可視化、短命な製品サイクルへの対抗、労働者福祉の改善が現実に可能なことを示してきた。公正な報酬と持続可能な生産を両立させる仕組みを築き、大手メーカーに対し、持続可能なビジネスは不可能ではないという具体的証拠の提示となっている。
Fairphoneは大手に比べればその規模は小さいが、着実に販売実績を積み上げ、公正なスマホが一定の需要を持ち得ることを示している。消費者には製品の裏側にある仕組みを選ぶ購買行動を促し、業界には、公正で持続可能な仕組みを整えても事業が成り立つ可能性を示してきたのである。