「買う」より「借りる」で実現する循環型消費
「MUD Jeans(マッドジーンズ)」はオランダ発のジーンズブランド。顧客に対して「買う」より「借りる」を推奨し、「所有」より「利用」を促している。
MUD Jeansによると、ジーンズ1本を製造するのに、コットン栽培からジーンズ製品になるまでおよそ8000リットルもの水が必要といわれている。その一方で、飽きがきて、穿かなくなったジーンズがクローゼットに眠ってしまっていることがある。特に、世界の平均ジーンズ所有数が1人あたり1本なのに対し、オランダは5本というジーンズ大国。ユーザーが大量に所有するのが当たり前になっている。
この課題に目を付けた同社は、使われないジーンズのために大量の水をコットン栽培に使用することはナンセンスだと考えて、循環型の消費サイクルを構築した。ユーザーとジーンズとの関係を「買って所有するもの」ではなく、「借りて利用するもの(返すもの)」へと変化させたのだ。こうして、返却されたジーンズを主原料としてジーンズを再製造することで、無駄な原材料調達を避けて、地球環境にとっても持続可能性のある循環型の仕組みをつくった。結果MUD Jeansの水の使用量はジーンズ産業における一般的なそれと比較し、およそ78%も削減されたという。
ユーザーは、会員費20ユーロに加えて、月々7.5ユーロのリース費を支払う形でMUD Jeansからジーンズを1年間リースする。生地は同社が所有しているという考えに基づき、リース期間中の修理は無料。1年のリース期間満了タイミングで、ユーザーはA.返却して新たなジーンズを借りる(継続して月々7.5ユーロを支払う)、B.返却して、次回以降使用できる10ユーロの割引券を受け取る、C.買い取る、のどれかを選択できる。返却されたジーンズは、再処理され、新たなジーンズとして生まれ変わり、また新たなユーザーへ「貸出」される。
こうした取り組みは高く評価され、環境・社会に配慮した事業活動に対して与えられる民間認証B-Corporation認証も取得している。すぐれたビジネスモデルは大量消費型の文化を持続可能な循環型に変えることができるのか? 期待したい。