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株式会社南紀白浜エアポート

熊野白浜リゾート空港

ワーケーションでビジネス客の誘致に成功している和歌山の地方空港

基本情報

企業名
株式会社南紀白浜エアポート
公式サイト
https://shirahama-airport.jp/
タグ
  • 地域活性化
  • 差別化戦略
  • インバウンド
  • コワーキングスペース
  • 社会課題
  • 共創

逆説の構造

  1. 起点
    空港
  2. 定説
    航空需要を受け入れる
  3. 逆説
    航空需要をつくり出す

ビジネスモデルの解説

空港が旅行会社として地域に新たな顧客層を呼び込む

熊野白浜リゾート空港(正式名称:南紀白浜空港)は、和歌山県の白浜町に位置する地方空港である。1968年に開港し、現在は主に東京(羽田)との定期便が運航されている。2019年には、国によるコンセッション(民間委託)方式により、株式会社南紀白浜エアポートが空港の運営を引き継いだ。以降、地域活性化を目指した新たな取り組みを通じて、空港の事業収入改善を本格化させている。
日本各地にある地方空港は、多くが慢性的な赤字に陥っている。そもそも航空需要が大都市圏に集中している日本において、地方空港は便数が限られ、利用者数も少ない傾向にある。熊野白浜リゾート空港も例外ではなく、コンセッション以前は年間3億円以上の赤字を抱えていた。 こうした地方空港の赤字体質を克服するためには、まず空港を利用する人、すなわち「航空需要」を生み出すことが重要である。定期便を維持・拡大するためには一定の搭乗率が求められるが、利用者が少なければ航空会社は撤退を検討せざるをえない。そのため、地域全体で観光やビジネスの目的で人を呼び込む取り組みが不可欠となる。 熊野白浜リゾート空港が位置する地域は、美しい海岸や温泉、アドベンチャーワールドのパンダなど、年間300万人が訪れる関西有数の観光地である。しかしその集客は夏季や休日に集中し、平日や冬季には利用者が大きく減少するという課題を抱えていた。この問題に対し、空港側は観光の“谷間”を埋める新たな需要の掘り起こしに乗り出した。 そこで設立されたのが、空港直営の旅行会社「紀伊トラベル」である。「紀伊トラベル」では、和歌山の梅をつかったジャム作り体験プランなどがあり、空港自らが地域の魅力を掘り起こした旅行企画をつくっている。しかし、なかでも特徴的なのは、首都圏の企業やビジネス客を対象にしたワーケーションや研修向けの長期滞在型のプランだ。 もとより白浜は、リゾート地と空港・駅・高速ICから15分圏内にコンパクトにまとまっており、ワーケーションに向いている地域だ。地域によるワーケーション向けの宿泊施設やワークスペースの整備も進んでいる。このような地域の利点を活かし、空港は首都圏の企業に向けて、東京での説明会や現地視察ツアーを開催し、滞在中には地域の産業や企業との交流を組み込んだ体験型プログラムなどを提案し、ビジネス客を誘致している。 さらに、空港は富裕層を対象としたプランも企画している。2023年度にはプライベートジェット機を利用した南紀熊野エリアのエグゼクティブツアーを企画し、首都圏や海外から直接熊野白浜に来訪し観光してもらう仕組みも整えつつある。消費単価の高い富裕層を誘致することで、地域経済への波及や地域全体のブランド力向上にもつなげる狙いだ。 こうした新規事業は空港単独では実現しえない。南紀白浜エアポートは、和歌山県公認の企業向け地域コーディネーターとして、自治体、宿泊業者、交通機関、飲食店、大学、金融機関、一次産業、IT企業など、多様な地域プレイヤーと連携している。誘致した企業と地域とのマッチング、企画支援、現地コーディネートなど、空港が地域のハブ機能を担っているのである。 これらの取り組みにより、熊野白浜リゾート空港の利用者数は民営化前と比較して約2倍に増加し、旅客取扱施設使用料(旅客がターミナル施設を利用する際の使用料)や旅行業の売上などにより事業収入も大きく改善した。特に平日・冬季など従来集客が難しかった時間帯においても、企業利用や富裕層観光による需要が創出されている。 日本中の地方空港が赤字脱却の解決策を模索する中で、熊野白浜リゾート空港のように自ら旅行業を展開し、地域を巻き込みながら収入を多角化するモデルは先進的だ。豊かな観光資源と連携力を活かしたこの独自の挑戦が、多くの地方空港を救うモデルケースとしてさらに注目されることを期待したい。
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