社会的な取り組みを応援したい市民から配当や利子のない出資金を募る
「未来バンク」は、市民が出資したお金を、環境保全や福祉、地域課題の解決に取り組む市民やNPO団体・法人へと融資する、日本初のNPOバンクだ。「バンク」と名はつくものの、営利を目的としない組合形式の金融機関であり、社会的意義のある取り組みに低利で融資を行うという、“市民による市民のための金融機関”だ。
未来バンクは、もともと1994年に日本で初めて設立されたNPOバンクである「未来バンク事業組合」と、その融資部門をもつ「未来舎」、そしてエコロジーな住宅の購入者の資金不足を補うための「天然住宅バンク」が合併し、2019年に「未来バンク」として新しくなった。
このNPOバンクが誕生した背景に、市民が銀行に預けたお金の使い道は、銀行の判断に委ねられ、預けた人の意志は反映されないという構造的な課題があった。市民が環境活動や福祉、地域再生といった分野にお金が使われることを望んでも、それが実現されるとは限らず、一方で、社会的な事業を行うNPOなどは、収益性の低さから金融機関からの融資が困難だった。
こうした課題を解決するために設計されたのが未来バンクの仕組みである。まず、市民が出資者として資金を預け、その資金は理事会の審査を経て、環境保全、市民事業、福祉、健康住宅、森林保全など、住みよい社会を目指す活動に対して、金利1~1.6%という低利で融資される(2025年時点)。この出資金は1万円からで、誰でも参加できる。
融資には5つの種類があり、たとえば補助金交付までの一時的な資金をカバーする「つなぎ融資」や、最大300万円までの「一般融資」、リスクや金額が大きい場合に使える「特定担保提供融資」などがある。融資を受けるには組合への加入が必要であり、申請者自身も出資者となることが求められる。なお、出資者には配当や利子、元本保証がないものの、総会での議決権を持ち、資金の使途がすべて公開される。「誰に、何のために使われたか」が見えるこの透明性が、出資者の信頼と社会参加の実感を支えている。
この仕組みの狙いの一つは、単なる金融支援にとどまらず、出資者が「お金を通じて社会に貢献できる」実感を得られる点だ。たとえば、自然エネルギーの導入を目指す地域団体や、福祉施設の立ち上げを計画するNPOなど、これまでに累計融資件数456件、累計融資額15億円以上の実績がある。融資先の団体には、地域の農業資源を活用したグリーンツーリズムを行う「NPO法人南アルプスファームフィールドトリップ」や、人と地球にやさしい衣料品・食品などの輸入・販売をフェアトレードで行う「フェアトレードカンパニー(株)」などがある。
未来バンクのこのような仕組みは、まるで「ソーシャルグッド版の銀行」と呼びたくなるようなモデルだ。金融といえば利益追求が当たり前と思われがちだが、未来バンクは「一人ひとりが、お金に意志をもたせ、よりよい未来の作り手となる社会の実現」を目的とする。未来バンクの理事や出資者はボランティアでの参加だが、それでも毎年およそ500人の出資者が参加している。
現在、全国には未来バンクのようなNPOバンクが12団体以上に増えている。それぞれが地域に根ざしながら、市民などから集めた資金を原資として、 社会性が高い事業に限定して融資している。社会課題が複雑化し、災害も多発するなかで、NPOや社会的企業の重要性は増しており、それを資金面で支える未来バンクのような存在は、今後ますます求められるだろう。