「見る」から「つくる」にフォーカス
「クラシル」は、2016年5月にスタートしたレシピ動画サービス。「クラシルシェフ」と呼ばれるプロの料理人による監修のもと、1日50本のペースで制作されており、2017年8月には「レシピ動画数世界一」を達成。豊富なレシピをアプリで見られる手軽さが、日々の献立に悩む人たちの心をつかみ、いまやレシピ動画界を牽引する存在になっている。
レシピ動画といえば、BuzzFeed社の運営する「Tasty」をはじめ、日本では「DELISH KITCHEN」が、SNSなどの他メディア上で展開する分散型メディアで先行した。ブームが広がるにつれ、見た目に鮮やかな動画の数々がSNS上を賑やかしていたが、見た目に特化している分、その動画を参考に料理をするのは意外と難しい。
クラシルはその点にいち早く目をつけて、「見る」から「つくる」
へとフォーカスし、より実用的なアプローチで多くのユーザーを惹きつけた。料理をする際に重要なのは、レシピが探しやすく、つくりやすいこと。他社が分散型メディアで「拡散性」を高めていく一方、クラシルでは必要なときに、必要とされるものを届けられる「検索性」を重視して情報を集約するアプリへと注力した。分散型メディアのように見た目のインパクトを追うことから一線を置き、つくりやすく、実用性の高いレシピをストックできるのもポイント。結果、クラシルはアプリDL数、再生回数ともに日本一になった。
レシピサイトは一般的に月額制のプレミアム会員費が主なマネタイズ手段になるが、クラシルはひと味違う。ユーザーの視聴と購買行動を集約し広告効果を可視化することで、企業からのタイアップ広告を集めることを可能にした。また、広告動画にはクラシルシェフも制作に関わり、動画に自然な形で企業商品を登場させている。これにより、ユーザーも広告に対してストレスなく視聴でき、従来のレシピサイトとは一線を画している。
2018年1月には、ソフトバンクなどから33.5億円の資金調達を行い、7月にはヤフーが連結子会社化したことでも話題になった。ミッションに「70億人に1日3回の幸せを届ける」と掲げるとおり、「レシピ動画」が暮らしへ溶け込みつつあることは間違いない。