緊急度判定とITの力で急病患者が医師に診てもらえる環境をつくる
ファストドクターは、日本初の夜間往診サービスとして、急な病気やけがの際に自宅で医師の診療を受けられる仕組みを提供している。このサービスは、夜間や休日など病院が閉まっている時間帯に、アプリや電話から簡単に救急相談ができ、医師が患者の自宅に訪問する往診やオンライン診療が受けられるのが特徴である。運営会社のファストドクター株式会社は2016年に設立され、これまでに16万件以上の往診を実施。自治体や医療機関とも協力しながら事業を拡大しており、救急医療を補完する新しい医療モデルとして注目されている。
サービスの利用は、公式アプリや電話から症状を伝えると、症状の内容に応じて医師の往診や診療の要否が判断され、必要な場合に診療が手配される。往診医師が自宅まで来たら診察が行われ、点滴や治療、薬の処方もその場で行われる。利用料は、診療費のほか、薬代、システム利用料、往診の交通費などがかかり、保険適用が可能だ。
このサービスが提供する価値は、患者と医療業界の両方にもたらされる。患者にとっては、病院に行けない状況でも迅速に医療を受けられる安心感を提供する。特に、夜中に小さな子どもが熱を出したり、高齢者が体調を崩したりしたとき、医師が家まで来てくれることで、本人や家族の不安と負担を減らすことができる。一方、医療業界にとっては、救急外来の不急の患者の診療を減らすことで、緊急かつ重症な患者に必要な医療リソースを集中させる役割を果たしている。
ファストドクターがこれらの価値を実現できる理由の一つが、メディカルコールセンターによる緊急度判定である。この仕組みでは、患者からの救急相談を専門の医療スタッフが受け付け、症状や緊急度を判断し、緊急搬送が必要な場合は119番を案内し、緊急受診が必要な場合は往診や診療の手配を行い、翌日以降の受診ですむ場合には一般外来や経過観察に振り分ける。判断には、医師とも連携して行われ、その基準は総務省消防庁準拠の緊急度判定プロトコルに基づく。
コールセンターは24時間365日、無料で相談を受け付けており、患者にとっては急病時にどのような行動をとるべきかを教えてくれる心強い味方だ。また、こうした緊急度判定による振り分けにより、救急医療の現場にとっては、不要不急の救急車利用を減らし、より重症な患者を受け入れることができるようになる。
また、ファストドクターの価値を実現するもう一つの理由が、運用業務への積極的なIT導入だ。たとえば、ITによる患者情報のデジタル管理や医師の診察スケジュールの最適化をすることで、短時間で患者の症状に適した医師を派遣できるようになっている。さらに、患者の保険証確認や利用料の決済はアプリから行われたり、電子カルテやデータをリアルタイムに共有することで、医師の事務作業の負担を軽くしている。こうして、貴重な医師の力を有効に患者のもとへと届けている。
このように、ファストドクターは独自に構築した救急相談の受付体制と徹底したIT化による業務効率化による医療提供により、日本の新たな夜間の医療インフラとなっている。対応エリアは、東京・大阪・愛知のほか北海道から福岡まで12都道府県と広く、参画医療期間から3,500名の医師が所属し、診療科目は救急・内科・小児科・整形外科にわたる。
ファストドクターは今後、自治体とも積極的に連携し、地域医療への貢献を目指している。特に、過疎地や高齢化が進む地域において、病院に行くのが難しい住民にオンライン診療や在宅医療を提供したり、距離による制限をなくすことを1つの目標としている。すでに、東京都や愛媛県、福島市、旭川市などとの連携実績があるようだ。
ファストドクターは、医療とITを融合させた独自の仕組みにより、患者、医療業界、地域社会にそれぞれ大きな価値を提供している。すでに大きな広まりを見せているが、夜間でも安心して暮らせる社会を支え、新しい医療の形として今後もさらに広まっていくだろう。