独自の医療特化型AIで生活者・医療機関・製薬企業の三方に事業を展開
体の不調を感じたとき、どの診療科に行けばよいのか分からず迷う人は多い。頭痛や倦怠感、腹痛など原因が特定しづらい症状では、適切な診療科を選べず受診が遅れたり、誤った科を受診してしまうこともある。その結果、治療の遅れにつながるだけでなく、医療機関側にも再診や紹介対応の負担が生じている。
こうした課題に対し、Ubie株式会社は「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションのもと、生活者向けに「ユビー」という症状検索エンジンを提供している。このアプリでは、利用者が体調についていくつかの質問に答えるだけで、考えられる病気や受診すべき診療科を提示してくれる。質問はAIによって最適化されており、短時間で個々の症状に合った情報を得られるのが特徴である。アプリは無料で利用でき、30〜50代を中心に幅広い世代に利用されている。
このサービスの要となっているのが、Ubie独自の「問診エンジン」と呼ばれるAI技術である。国内外の5万件以上の医学論文を基盤に構築された医療知識データベースをもとにした医療特化型のAIであり、50名以上の医師が監修を行っている。その現場での実用性が評価され、これまでに一般社団法人Generative AI Japanが日経ビジネスなどと主催する「生成AI大賞2024」など、多くの賞を受賞している。
UbieはこのAI技術を活用し、「ユビーメディカルナビ」という医療機関向けのDXソリューションも展開している。これは、来院前や受付時に患者がタブレットやスマートフォンで問診に回答すると、AIが症状を整理してカルテ用のデータを自動生成する仕組みを備えている。さらに、診断書や紹介状、カルテなどの書類作業も生成AIによる文書作成や要約機能で省力化するサービスも提供しており、診療の前後を通じて医師や看護師の負担軽減や業務効率化に貢献している。
Ubieの収益構造は、医療機関・製薬企業・生活者の三方向から支えられている。生活者向けのアプリは基本的に無料で提供されているが、有料オプションとしてオンライン診療や医師相談といった機能を利用できる。主な収益源は医療機関向けサービスで、年額でシステム利用料を支払うライセンスモデルを採用している。また、製薬企業向けにも、疾患啓発やデータ分析などのマーケティング支援を通じて収益を得ており、ヘルスケア業界全体をつなぐプラットフォームとして機能している点が特徴である。
その実績は国内でも際立っている。症状検索エンジン「ユビー」は月間1,300万人以上が利用し、医療機関向けでは全国で1800件以上の病院やクリニックに導入され、国内で広いシェアを獲得している。こうしたシェアを背景に、同社はGoogle、NTTドコモ、日本郵政などの大手企業から出資を受け、累計で約180億円の資金調達を実現している。強固な資本基盤をもとに、さらなる事業拡大を進めている。
現在、Ubieは米国を中心に海外展開も加速している。英語版のアプリや製薬企業向けのサービスを通じて、現地の医療制度や文化に合わせたローカライズを進めながら、世界中の人々がより早く、より正確に医療へアクセスできる環境づくりを目指している。症状検索から受診、診療、治療後のフォローまでを一気通貫で支援する仕組みとして、グローバルな医療インフラの一部となることを視野に入れている。