ケアする家族の負担も体力的にも金銭的にも軽減
医療的ケア児と呼ばれる子どもたちは、人工呼吸器や胃ろう、たんの吸引など、日常的に医療的なサポートを必要としている。家庭でのケアを担うのは多くの場合、家族であるが、昼夜を問わず続くケアや外出時の医療的準備、学校や保育園での付き添いなど、家族の負担は大きく、休息や仕事の時間が十分に取れていない現状がある。しかし、小児に対応できる訪問看護ステーションは全国でも限られており、特に医療的ケア児に特化したサービスはまだ少ない。家族の負担を軽減しつつ、子どもが社会とつながるためのサポートはいまだ不足している。
このような現状に取り組むのが、株式会社Medi Blancaが運営する「ソイナース」である。ソイナースは、医療的ケア児をはじめとするすべての子どもと、その家族の生活を支える看護師によるケアリングサービスだ。訪問看護や在宅レスパイト支援(家族や介護者の休息を目的とした支援)に加え、通園・通学時の付き添いやスクールバス同乗など、日常生活に寄り添う形の支援を行っている。単に医療行為を担うのではなく、看護師が子どものケアを代行することで、家族が安心して外出や仕事、休息の時間を確保できるようにすることを目的としている。
利用の流れはシンプルだ。例えば、利用者は主治医から訪問看護指示書を取得し、自治体やソイナースに相談の上で訪問スケジュールを設定する。1回の利用はおおむね1〜2時間程度から可能で、週1回の定期利用から、通学支援や行事など特定日のみの利用まで柔軟に対応している。利用料は、医療保険や自治体の助成制度を活用でき、自己負担は2~3割に抑えられる。さらに乳幼児医療費助成や小児慢性特定疾病の助成を併用すれば、交通費を除いて実質的に無料になる場合もある。また、保険が適用されない場合の見守りや夜間・早朝の付き添いなども、保険外(自費)サービスとして提供されている。発熱時の一時支援や学校・保育園での短時間ケアなど、制度の枠を超えた柔軟な支援が可能だ。こうした仕組みにより、家族の経済的な不安を抑えつつも、ケアが必要なときに必要な分だけ利用できるようになっている。
一方で、ソイナースは看護師の働き方にも新しい選択肢をもたらしている。病院勤務では夜勤や長時間労働が避けられず、出産や育児を機に離職する看護師も多い。ソイナースでは、週1日・1時間からの勤務や、平日のみ・夕方のみといった柔軟な働き方が可能である。育児や副業と両立しながら社会とつながりたい看護師にとって、働くハードルが低い点が魅力となっている。看護師は、自分の生活リズムに合わせて仕事を選び、家庭や地域での小さな支援を積み重ねることができる。結果として、潜在看護師の復職促進にもつながり、医療人材の新しい循環を生み出している。
ソイナースのもう一つの特徴は、医療・教育・行政の垣根を超えた連携である。学校や保育園で医療的ケア児を受け入れる際、看護師の配置や支援体制が整っていないことが多い。ソイナースは自治体と協定を結び、通学バスの同乗支援や学校現場での医療サポートを行っている。これは、子どもが「家で守られる存在」から「地域で学び、遊び、成長する存在」へと広がるための仕組みでもある。医療的ケア児の登校を支えることで、親だけでなく、地域社会全体がその成長を見守る環境が少しずつ整いつつある。
事業の展開も着実に広がっている。創業当初は東京都23区を中心にサービスを展開していたが、現在は神奈川、埼玉、千葉の一部地域に拡大し、2025年には群馬県前橋市にも拠点を開設している。自治体との契約や地域ニーズに応じた形で事業を拡大しながら、訪問看護だけでなく、児童発達支援や放課後等デイサービスにも領域を広げている。登録看護師数は3,000人を超え、医療的ケア児支援の分野では国内でも有数のネットワークを形成している。
ソイナースのビジネスモデルは、利用者の自己負担を最小限に抑えつつ、看護師に柔軟な働き方を提供し、各家庭の努力だけに頼らず子どもを支える仕組みを作る点に特徴がある。医療保険と公的助成を組み合わせることで経済的に持続可能な構造を実現し、同時に「支援を受ける側」と「支援する側」の両方が報われる形を追求している。その結果、看護師、家族、自治体、学校といった多様なステークホルダーを巻き込みながら、新しい社会的インフラとしての姿を描きつつある。