アーティスト、レーベル、ユーザー全員がハッピーに
スウェーデン発の「Spotify(スポティファイ)」。月間1億6000万人以上のユーザーが利用する世界最大級の音楽ストリーミングサービスだ。Spotifyの登場には、ある背景があった。2006年の創業当時、音楽の違法ダウンロードや海賊版の流通が社会問題として挙げられていた。これらの最大の問題はアーティストへ収益が分配されない点にある。共同創業者の1人であるダニエル・エク氏は、この問題に対して、アーティストやレーベルに対価が支払われる仕組みを設計した。
実際、Spotifyがリリースされた2008年から3年後の2011年には、スウェーデン国内における楽曲の著作権問題が約25%減少したという実積がある。成功要因のひとつは、そのビジネスモデルにある。収益源はユーザーからの月額課金と広告の主に2つだが、特にユニークなのが広告モデル。Spotifyは独自の広告配信システムや広告メニューを保有しており、これまでにNetflixやBOSEなど大手広告主からの出稿実積もある。月額課金に加えて、広告からの売上も立てることでサービス利用料無料でもアーティストやレーベルにきちんと報酬を支払うことができる。Apple MusicやLINE Musicなどの競合他社は月額課金を前提として、無料トライアル期間を設けているが、Spotifyでは一部の機能に制限はあるものの期間無制限かつ無料でフル再生や楽曲選択が可能(PC/タブレット)。アーティスト・レーベル・ユーザーの全員がハッピーになる仕組みをつくり上げたことに感動する。
広告モデルに加え、課金売上の部分も強み。980円の月額課金はプレミアムプランという位置づけで用意されていて、ユーザーはより高音質の曲を聴けたり、広告がなくなったり、オフライン再生が可能になったりする。ユーザーの44%がプレミアムプラン登録ユーザーであり、売上の9割がこのプレミアム課金からだ。
楽曲の著作権問題やレーベル・アーティストからの批判などの報道が目立つ同サービスだが、積極的なテクノロジー企業のM&Aや2018年にIPOを実施するなど動きをどんどん加速させている。さらなる音楽体験向上のためにどんな打ち手を用いるのか楽しみだ。