値段がつかない古本に価値を与え、新たな循環を生み出す
従来の古本業界は、利用者が店頭に本を持ち込み、業者が立地や目利きで競う対面取引が中心だった。そして2000年代以降になると「送料無料で送れる宅配買取」が普及し、重たい本を自宅から簡単に手放せる利便性が評価され、業界全体の標準モデルとして定着した。一方で、買取できない本までが大量に集まり、物流費や在庫リスクが増大して経営を圧迫するという構造的課題を抱えた。
こうした流れに一石を投じたのが「バリューブックス」である。本の買取と販売を行うオンライン書店として2007年に創業。当初は同業他社と同じく、送料を全額負担していたが、2018年に送料有料化に踏み切り、利用者とコストを分かち合う仕組みに再設計した。買取1箱につき500円を送料として差し引く代わりに、買取金額を従来の1.5倍とする方式を導入したことで、利用者にも納得感のある形で物流コストの適正化を実現した。
送料有料化に伴い、事前にWEB上で本の買取額を調べられる「おためし査定」をオープン。買い取れた本にはすべて個別の明細を付ける取り組みもスタートした。その結果、より高い価格での買取が実現。平均買取額はリニューアル前と比べて約1600円アップした(2018年12月時点)。バリューブックスには1日あたり約数万冊の本が届き、査定を経て中古販売可能な本がオンライン書店に出品され、次の読み手へとつながる。また、中古販売不可となった本の一部は病院や学校などの施設へ寄贈されたケースもあった。
さらに、提携した出版社の古本が売れた際に売上の3割を出版社に還元する「バリューブックスエコシステム」や、古本買取の仕組みを活用して本の寄付を集め、NPOや大学の活動資金として循環させる「チャリボン」など、価値の流れを社会へ拡張する仕組みを整えている。
こうした一連の取り組みにより、バリューブックスは「売れない本」を単なる廃棄物ではなく、次の価値や循環につなぐ資源として扱うビジネスモデルとして昇華させた。物流・中古販売・寄付の各段階を通じて、本を介した価値の循環を社会全体に広げているのである。