電気が届かない地域に住む10億人に電化の豊かさを
「WASSHA(ワッシャ)」は、デジタルグリッドという新しい電力制御技術を活用し、電気を誰の手にも届く場所に、手の届く価格で提供する「電気量り売り」サービス。アフリカの未電化地域で展開し、1000以上の店舗で導入されている。ちなみにWASSHAは造語で、スワヒリ語で「火をつける」という意味のWashaからとったそう。
このビジネスのすごいところは、途上国の未電化地域へ電気を供給する仕組みをつくり出したこと。先進国では電力会社と契約して電気を使い、従量課金で支払うのが当たり前。それだと、未電化地域では電気の恩恵を受けられる人が限られてしまう。そこで前払い式の「量り売り」を実現することで、未電化地域に住む低所得の人たちでも電気の恩恵を気軽に受けられるようになった。
電気を量り売りする仕組みは、次の通り。「キオスク」と呼ばれる未電化地域に点在する日用雑貨店に代理店になってもらい、WASSHAからキオスクに対して事業に必要なツール(ソーラーパネルなど)を無償でリース。キオスクはソーラーパネルで発電した電気を専用のスマホアプリから使う分だけモバイルマネーで購入し、LEDランタンやラジオなどを充電して地域住民向けにレンタル販売し収益を得る。それとは別に、店舗に日用品を買いに来た客がついでに携帯電話を充電するという使い方もできる。発電状況や電気の利用状況はダッシュボードと呼ばれるWASSHAのシステムへ自動送信されるので、これらのデータを管理・分析することで離れた場所からでもビジネスの状況を確認し、サポートできる。
電化による豊かさを提供するだけでなく、BOPビジネス(途上国の低所得層を対象に、貧困解消に貢献しながら利益を生み出すビジネス)として成立しているのもすばらしい。キオスクのオーナーは、WASSHA事業によって収入アップが期待でき、電気を利用する地域住民もライトがあれば夜でも露店を開くことで、売上アップにもつながる。WASSHAの代理店開拓・管理チームは、一部現地採用を行っていて雇用の創出にも貢献している。現在はタンザニアを中心とした事業展開だが、今後はアフリカ全土への進出を予定しているとのこと。日本発のベンチャー企業がアフリカの未電化地域でのスタンダードになることを期待したい。