車両認識AIによって駐車場の入出庫と支払を完全自動化
駐車場は日常生活に不可欠なインフラでありながら、そのユーザー体験は数十年にわたりほぼ変わっていない。入庫時にチケットを受け取って出庫時に精算機で現金やカードを通す。ゲートやチケット発券機といった専用ハードウェアの導入・保守には高額なコストがかかるだけでなく、不正通過や料金漏れによる収益ロスも業界の構造的課題であった。駐車場オーナーは設備の老朽化や運営の非効率性に悩まされ、駐車場利用者にとっても現金の持ちあわせがない等の問題はストレスになっていた。
こうした不便さを解決しているのが、2017年にロサンゼルスで設立されたMetropolis Technologies. Inc.(メトロポリス・テクノロジーズ)である。Metropolis Technologiesはコンピュータビジョンとディープラーニングを活用してチケットも出庫時の支払操作も不要な駐車体験を実現した。利用者は初回にアプリで車両情報と決済手段を登録するだけ。以降はMetropolis対応の駐車場に車で入れば、カメラが車両のナンバープレートと外見的特徴から登録会員を瞬時に識別し、駐車場を出たら自動で決済が完了する仕組みである。
この体験を支える中核技術が独自のカメラとAIによる車両認識ソフトウェアである。駐車場に設置されたカメラがナンバープレートだけでなく車体の色や形状、傷、ステッカーといった外観的特徴を複合的に読み取り車両情報を生成する。登録済みの会員は入庫した瞬間にシステムが認識し、滞在時間に応じた料金を自動で算出して決済まで完了させる。ドライバーはスマホや現金を取り出すことすらなく駐車場を利用できる。一度登録すればMetropolis対応の全施設でこの体験が有効となり、毎回の匿名利用が「自動認識される会員体験」に変わる点が従来の駐車場との決定的な違いである。
この技術はオーナー側に大きな価値をもたらす。ゲートやチケットの発券機をカメラとソフトウェアに置き換えることで設備コストを大幅に削減できる。全車両の入出庫データがリアルタイムで記録されるため、従来は現金中心で把握しにくかった不正通過の検知や収益の可視化、利用ユーザーの可視化を実現することができる。
料金プランは3段階で構成されており、設備不要でQRコード決済のみを使うScanプラン(月額$0/1台分のスペース)から、車両認識で入って出るだけのチェックアウトフリー体験を提供するVisionプラン(月額$15/1台分のスペース)、さらに複雑な施設の駐車場の運営管理を一括で委託できるVision+(カスタム価格)まで用意されている。平面駐車場を持つ個人事業者から数千台規模の複合施設オーナーにまで対応したビジネスモデルだ。
Metropolis Technologiesはもともとテクノロジー企業であったが、駐車場運営そのものも垂直統合するため、2024年に駐車場運営企業を約15億ドルで買収して従業員数を約2,000人から23,000人超へと急拡大させた。そうすることで、現在は、北米最大規模の駐車場運営企業となり、現在は40か国4,200か所以上の施設を運営している。
従来の駐車場運営会社がゲートやチケットの発券機に依存していたのに対し、Metropolis Technologiesはそれらをすべて自社のAIソフトウェアに置き換えることによって、設備コストを大幅に削減しつつ不正通過の検知や収益データの可視化ができる駐車場運営を実現。同社の技術は駐車場にとどまらず空港やホテル、小売店舗やモビリティ領域にもすでに展開されており「入って出るだけ」のシームレスな体験を街全体へ拡大させている。