店舗への納品を終えたコンビニの配送トラックを活用した独自の配送の仕組み
EC市場の拡大とフリマアプリの普及により、サービスを利用した個人が商品の「返品」や「発送」をする機会は急増している。しかし、返品や発送を行う際には、窓口への持ち込み、手書き伝票の記入、受付時間の制約など、利用者にとって多くの手間が伴うものだった。また、EC事業者にとっても、サイズ違いやイメージ違いによる返品は受け入れる方が顧客満足度が上がる一方で、その返送コストは、長らく事業者にとって負担となっていた。
こうした構造に着目し、2019年に三菱商事株式会社が立ち上げたのがSmariである。ローソンを中心に全国約3,000店舗に設置された専用の「スマリボックス」に荷物を投函するだけで手続きが完了する。送り状の記入は不要で、個人情報が印字されない設計はプライバシーへの配慮も兼ねている。24時間365日いつでも利用できる手軽さも特徴で、「10秒返品・10秒返却」を目指して設計された。
Smariの仕組みの核心は、ローソンのコンビニ配送網の「戻り便」を活用する点にある。コンビニの配送トラックは1日複数便の納品を行っているが、店舗への納品を終えた後の帰路は荷台がほぼ空の状態で運行されていた。この「もったいない空間」に着目し、スマリボックスに投函された荷物をその帰路で回収する仕組みを構築したのである。新たな輸送車両を必要としないため、コストを宅配便より数割抑えた低価格な料金体系が実現し、CO₂排出量の削減にもつながっている。三菱商事はこの一連の仕組みについてビジネスモデル特許を取得しており、構造的な参入障壁を築いている。
この事業は、三菱商事がローソンを子会社化したことで生まれた発想から始まっている。同社は2017年以降、全国約15,000店舗に張り巡らされた物流網を単なる食品流通の手段としてではなく、社会課題を解決するプラットフォームとしてとらえ直した。Smariはその視点から生まれたサービスである。また、総合商社としての立場を活かし、airCloset、LOCONDO、メルカリなど多数のEC・レンタル事業者と提携。特定のEC事業者に依存せず複数のサービスを横断して荷物を取り扱う「オープンな設計」が稼働率と収益性を安定させている。
さらに、Smariは宅配ボックスメーカーと連携して戸建て・集合住宅の自宅玄関からの発送にも対応するなど接点を生活空間へと広げ、静脈物流と呼ばれる「戻り便」を活かしたサービス展開を進め、利便性の向上を図っている。
Smariは返品・発送という、利用者や事業者の長らくの負担を小さくし、ECの購買体験を向上させた。既存のリソースを活かし、個人による発送が拡大する時代に、新たな物流インフラを着実に広げている。