社会課題に挑む人が生まれ続ける〝社会の仕組み〞をつくる
従来、多くの社会課題は「ビジネスにならない」として見過ごされてきた。貧困や環境問題、教育といった分野は解決の必要性が明らかでありながら、収益性が乏しいために民間企業が積極的に取り組むことは難しかった。
「ボーダレス・ジャパン」は、「儲からない」と切り捨てられてきた課題に、あえてソーシャルビジネスで挑み続けている。現在は世界13か国で50以上の事業を展開し、2024年度には売上100億円を超える見込みで、この分野では異例のスケールを実現している。
その一例が「AアモーマMOMA」だ。ミャンマーの農家はタバコ栽培による健康被害や借金に苦しんでいた。AMOMAは彼らがタバコ畑を無農薬ハーブ畑に転換することを支援し、適正価格で買い取ることで安定収入を保証した。このハーブは、日本の授乳期の母親が抱える母乳不足の悩みを解決する「ミルクアップブレンド」として商品化され、産婦人科でのサンプル配布を通じて多くの母親に届けられている。こうしてAMOMAは、生産者と消費者、双方の社会課題を結びつけて解決している。
こうした事業はAMOMAにとどまらない。失業率の高い地域で雇用を生み出す事業、開発途上国での環境保全や再生可能エネルギー事業、難民や障害者の自立支援事業、教育格差を埋めるための学習支援事業など、多様な課題に対応する事業が世界各地で立ち上がっている。ビジネスモデルはそれぞれ異なるが、いずれも「解決すべき社会課題」を起点に設計されている点で共通している。
ボーダレス・ジャパンが生み出してきた事業群を支えるのは、資金やノウハウを循環させる独自の仕組みだ。それは大きく3つの機能に整理できる。第一に、「生み出す仕組み」。黒字化した事業は利益の一部(当期純利益の10%)を共通の資金に拠出し、それが新たな起業家への創業資金となる。こうして「恩送り」の連鎖が広がり、次々と新しい事業が生まれていく。第二に、「育てる仕組み」。立ち上げ期の事業は、マーケティングや広報、人事・財務などをスタジオの専門チームから支援される。事業が軌道に乗れば一部利益を拠出し、経理や労務といったバックオフィス業務も専門家に任せられる。起業家は社会課題の解決という本来の使命に集中でき、事業の安定化が加速する。第三に、「広げる仕組み」。国内外で活動する起業家同士が知見やネットワークを共有し、互いに事業を広げ合う。単独では届かない規模や地域にも集合体として挑むことができる。
こうした循環型の仕組みによって、ボーダレス・ジャパンは「社会貢献か、ビジネスか」という二者択一を超え、社会性と経済性を両立するソーシャルビジネスを持続的に生み出し続けている。今後も、まだ誰も手をつけていない領域や新しい地域に挑み、社会課題解決の可能性を広げていくはずだ。