水不足に悩む農家のための、廃棄された果物から生まれた「土に還るポリマー」
世界では、いまも多くの農家が深刻な水不足に直面している。特にインドや中東、アフリカなどの乾燥地帯では雨が数か月も降らないことがあり、畑に十分な水を与えられないまま作物が枯れてしまう。井戸水をくみ上げても地下水位は年々下がり、灌かん漑がい設備を持たない小規模農家にとっては打つ手が限られている。地球温暖化で干ばつの頻度は増し、農業の持続性が危機にさらされている。水不足は収穫量の減少だけでなく、農家の生活や地域社会全体の存続にも直結する深刻な課題だ。
こうした現場に新しい解決策を示そうとしているのが、インド発のスタートアップ、EF Pポリマーolymer株式会社だ。「ポリマー」は水を吸収して保持する素材で、紙おむつや保冷剤など身近な製品にも広く使われている。しかし、従来のポリマーは石油由来のため分解性が低く、廃棄後の焼却時に多くのエネルギーを要するなど環境負荷を与えてきた。
EF Polymerが開発する「EFポリマー」は、この課題を根本から解決するものだ。土に混ぜれば自重の約50倍の水を吸収し、半年ほどかけて水を吸ったり放出したりしながら畑を潤す。水だけでなく肥料分も抱え込むため、雨で肥料が流れ出すのを防ぎ、結果として肥料の使用量も減る。実際、インドでの実証実験では、農家の節水は最大40%、肥料削減は20%、収穫は約20%向上したという。
現在はインドや日本、米国、フランスを中心に、多くの農家に届けられている。原料にはオレンジやバナナの皮といった従来捨てられてきたものを使う。化学薬品を使わず製造され、使用後は約1年で土に分解される。まさに、自然に還るポリマーである。さらに、独自の製法や現地ネットワークを活かしたサプライチェーンにより、石油由来品と比較して価格競争力の高さにも強みを持つ。
創業者ナラヤン・ガルジャール氏は、インド西部の小さな農村に生まれた。幼い頃から、干ばつで畑にひびが入り作物が枯れていく光景を見て育ち、水不足に苦しむ両親や村人を助けたいという思いが原点となった。高校時代に構想を練り、大学在学中に仲間とEF Polymerを立ち上げ、2019年には沖縄科学技術大学院大学(OIST)のアクセラレータープログラムに採択されて来日。現在は沖縄に拠点を移し、研究開発を進めている。
この技術は国際的にも注目されている。EF Polymerは「2022 APACクリーンテック25」に選出され、LVMH主催のWorld Living Soils Forumで総合優勝した。廃棄果物を活用し、自然に還るポリマーで水不足に立ち向かう取り組みは、農家の暮らしを支えるだけでなく、持続可能な農業の未来を描くものとして評価が高まっている。