落とし物の探し方を根本からひっくり返す仕組み
年間8000万件̶これは日本で届け出られている落とし物の数だ。駅や空港、商業施設で毎日のように発生し、現場はその対応に追われてきた。電話が鳴り、紙の台帳と写真での管理、警察への届け出……。どれも時間がかかり、しかも収益に直結しない。人手不足の中では「対応に追われる」こと自体が大きな負担になっていた。「find」は、こうした状況を根本から変えるクラウドサービスである。京王電鉄などの協力を得て現場に入り込み、実際にスタッフとして働きながら課題を洗い出して、AIとクラウドを組み合わせた仕組みをつくり上げた。
従来、落とし物の登録は、人がその特徴を文章で記録するのが一般的だった。しかし、色や形の言いまわし一つで探す人と記録する人の認識が食い違う。「赤い財布」と記録されていても、持ち主が「ワインレッド」と申告すれば検索に引っかからない、といったことが日常的に起きていたのだ。
findでは、拾得物をスマホで撮影するだけでAIが色や形を自動判定し、関連する色も含めて分類する。これで「赤」と「ワインレッド」が別物扱いされることはなくなり、検索の精度が大きく向上。結果として、落とし物の返却率は3~4倍に跳ね上がっている。
問い合わせ対応も大きく変わった。従来は電話が中心で、スタッフが何十件、何百件と応対していたが、findではAIチャットと専用オペレーターが24時間受付する。利用者はLINEやWebから時間や場所を問わず問い合わせでき、現場スタッフは本来の業務に集中できるようになった。落とし主にとっても「探す負担」が大幅に減ったことになる。さらに、落とし物管理には保管期限や警察への届け出など、遺失物法に基づく法的要件がある。findはこれらをシステムに組み込み、施設が適切に管理できるよう設計されているため、公共性の高い施設でも安心して導入できる。
findでは取り扱う落とし物の数に応じて料金が決まる。中央値は月額80万~100万円ほどだが、実際には10万~2000万円超まで幅がある。一見安価ではないが、導入施設では、落とし物登録や問い合わせ対応などの業務コストが平均80%削減され、返却率の大幅向上も実現するため費用対効果は高い。こうした成果は口コミで広まり、鉄道や商業施設にとどまらず、空港や大規模イベント会場などにも利用が拡大している。しかも、支払いはほとんど年額一括で行われるため、会社経営のうえで重要なキャッシュが先に来る仕組みになっている。
導入施設はすべての落とし物情報を単一のデータベースで管理するため、導入が広まるほど落とし主は施設ごとに問い合わせる必要がなくなる。利便性は施設側と落とし主側の双方で向上し、ネットワーク効果によって導入の価値がさらに高まる構造だ。
findは単なる返却効率化にとどまらず、落とし物を起点に現場のオペレーション改善や安全対策の高度化まで実現できるのが特徴。技術と現場感覚を融合させ、身近でありながら社会全体に影響する課題を解きほぐしていくこの仕組みは、今後ますます存在感を増していくだろう。