戦略的な赤字で急成長を遂げたフリマアプリ
メルカリは、2013年に日本で設立されたフリマアプリだ。ユーザーはアプリを通じて不要品を出品でき、他のユーザーがそれを購入する、売りたい人と買いたい人をマッチングする場を提供している。メルカリの強みはその商品数の多さで、2023年時点で累計出品数30億品を突破している。商品数の多さから、多種多様な欲しいものが見つかりやすく、それが多くのユーザーを惹きつけている。
メルカリの収益のあげ方はシンプルで、取引が成立すると売上の10%を販売手数料として得る仕組みだ。つまり、流通取引総額を増やすことがメルカリの売上を増加させる鍵となっている。
そのために、メルカリは、広告宣伝費を積極的に投入して新規のユーザー数を増やすことで、将来のキャッシュフローを増やす戦略を取っている。現在は黒字化しているが、創業から2020年6月期までは赤字であるのにもかかわらず、広告宣伝費をかけ続けていた。通常、赤字のまま多くの広告宣伝費をかけつづけると多くのキャッシュが必要となり、もし途中でキャッシュが足りなくなれば会社経営のリスクが高まってしまう。
しかし、メルカリの場合、「預り金」を利用することで、キャッシュフローを安定させることができている。預り金とは、取引成立後に購入者からの代金を一旦預かり、商品の発送と受取確認が行われた後に出品者に支払われる資金のことだ。また、ユーザーのアカウントに残ったままの売上金も預り金に含まれる。
つまり、これだけ広告宣伝費に投資できている1つの理由として、預り金があり、キャッシュが潤沢にあることがあげられる。そして広告により、新規ユーザーを獲得し、取引数が増えると、自然と預り金の総額も増加する。このサイクルを繰り返すことで、メルカリは預り金をさらなる広告宣伝費に充てることができる。このようにして、広告宣伝費による赤字が続いても、キャッシュフローは安定しているため、成長を続けることが可能となっている。
また、広告宣伝費をかけても、ユーザー体験が向上しなければ、新規ユーザーはアプリを利用し続けることなく離れてしまうため、メルカリは出品から売却までの手間や不安を減らす機能やサービスを充実させることにも力を入れている。
例えば、出品するときに、その商品の価格や商品説明などの情報を自分で考えて入力しなければならないとなると手間だろう。しかし、メルカリの場合、売りたい商品のバーコードを読み取り、写真を撮って、商品の使用状態を選ぶという手順だけで出品の手続きが完了する。商品のタイトルや商品説明、売れやすい価格といった、出品に必要な情報は、わざわざ自分で入力しなくても、バーコードを読み取る時点で自動的に入力される。こうした機能により、出品の手間が大幅に削減されることで、出品を促しやすい仕組みになっている。
また、実際に購入の申し込みがあり、商品を発送するときに、自分の住所が知られることを懸念する人もいるだろう。そうした懸念に対応して、匿名配送によって必要な個人情報を知らせることなく取引ができる仕組みを設けている。
このように、フリマを利用する際に感じる手間や不安を解消する仕組みを構築することで、商品数や取引数を増やすことに成功したのである。
これらの仕組み以外にも、最近では、ユーザーが偽物を買ってしまうことや売ってしまうことを防ぐために、商品の真贋鑑定を依頼できるサービス「あんしん鑑定」を一部カテゴリーで提供開始したり、適切な販売価格を考えたり、価格交渉に対応したりするユーザーの手間を解消するために、価格を設定せずに出品する「価格なし出品」サービスも開始する等、よりユーザーにとって安全で簡単なフリマアプリとしてアップデートを続けている。