ITの活用と撮影部位を限定してコスト削減した脳検査
日本は他の国と比べるとMRI(※体に電磁波あてて断層撮影する方法・装置を指す)の保有台数が多い。OECDのデータでは2017年の人口100万人当たりMRIの台数は52台で、OECD平均の14台を大きく上回っている。※1
保有台数が多いということは、病院などの医療機関に設置されている台数が多いということ。そして、各医療機関は機器の購入に大きな金額を投資しているため、その投資額を早く回収するには高い稼働率を維持する必要がある。ちなみにMRIの撮影時間は1部位あたり15〜60分であるので、1〜4件の検査が可能だが、実際の医療機関ではMRIは全身検査を行うために導入していることが多く、そうすると検査を希望する人毎に検査部位に合わせてMRIのセッティングを変える必要があるので、1時間あたりの稼働率は下がってしまう。また、検査結果画像の読影や検査の際のセッティングなど1回のMRI検査に対して多くの医療従事者が携わるのでコストが高くなってしまう。こうした運用で投資額を回収するために利益を生み出そうとすると、1回あたりの検査価格を高くするか、より多くの検査を受けてもらうことで1人あたりの単価を高くする必要が出てくる。
そこにスマート脳ドックを提供しているスマートスキャン株式会社が注目した。保険診療においては来院した人の診療報酬点数が売上の原資になるため、点数が取れる行為であるのにあえてそれを自由診療だけで行うという発想になりづらい。しかし、機器の稼働率向上と固定費の削減により、24,750円(税込)と通常30,000~70,000円(※2)かかる市価よりも安く脳検査提供を可能にし、自由診療でも続く仕組みを成り立たせている。
具体的には、全身撮影できるMRIを敢えて脳だけ撮影することでセッティングを変える必要をなくし、受付や予約、検査結果の確認などをPCやスマホからできるようにすることで、人が行う部分のコストを下げている。また、撮影後のデータをクラウドにあげて読影・診断を遠隔地にいる医療従事者に依頼することで、スマートスキャン株式会社は必要最低限の医療従事者で稼働を可能にし、固定費削減を行なっている。
スマート脳ドックは予約から決済、検査結果の確認までインターネット上で完結させることができる。予約は24時間可能なだけでなく15分刻みで設定されていて、検査時間は受付から平均30分なので隙間時間に検査をすることも可能。検査に関しても、スマートスキャン株式会社が業務提携している株式会社エムネスが開発しているLOOKREC(ルックレック)というクラウドサービスを導入することで、撮影後の読影(画像による病変の有無、良悪の診断)もエムネスの放射線科医と脳神経外科医にしてもらっている。このように読影をアウトソーシングすることにより固定でかかる医療従事者の人件費を下げるだけでなく、読影にかかる作業効率化を図っている。
ちなみに、「脳血管疾患」(脳梗塞やくも膜下出血などの総称)は厚生労働省のデータによると2022年度日本人の死因第4位(※3)であり、今後脳検査の需要が高まると予想される。そうなった際に、短時間で安く検査してくれるサービスはますます必要とされそうだ。
引用元
※1 [OECD] OECD Health Statistics 2019 / Medical technology, MRI units, total, Per million population (下記リンクをクリックすると、OECD発行のエクセルデータがダウンロードされます)
https://www.oecd.org/health/OECD-Health-Statistics-2019-Frequently-Requested-Data.xls
※2 脳ドックの費用相場
https://smartdock.jp/contents/inspection/is016/
※3 [厚生労働省]性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf