混雑の検知・解析・配信を一体で提供し、施設が導入しやすいサービスへ
混雑は日常のさまざまな場面で人々に負担を与えるものである。飲食店やトイレがなかなか空かない不便さ、観光地での滞留、避難所で収容人数が把握できないといった問題は、利用者のストレスだけでなく施設運営の効率低下や安全管理の難しさも引き起こしてきた。こうした課題は、空き状況が見えないまま人が集まってしまうことに根がある一方、その可視化には高額な設備投資やネットワーク整備などのハードルがあり、容易ではなかった。
その状況を変える存在として注目されているのが、株式会社バカンが提供する「VACAN(バカン)」である。VACANは、施設内のトイレ、座席、店舗、駐車場、避難所など、多様な空間の“いま空いているか”を可視化するサービスであり、利用者が状況を一目で判断できる仕組みを提供している。センサーやカメラで取得した情報をクラウドで解析し、デジタルサイネージやスマートフォンへ配信する一連の基盤が整っているため、施設の混雑状況や待ち人数をリアルタイムで把握できる点が特徴である。
では、この可視化は実際にどのようなメリットを生むのだろうか。利用者にとっては、利用したい場所の混雑状況が施設内モニターやウェブサイトなどで事前に分かることで、行くタイミングや場所を選びやすくなり、無駄な時間やストレスを減らせる。施設側にとっては、それが満足度向上だけでなく、集客率や回転率の向上につながる場合もある。また、混雑状況を通じて得られる利用データにより、人員配置や動線の改善を検討しやすくなり、運営効率を高めるという効果も期待されている。
こうした価値を支えているのが、VACANの包括的なサービス設計である。表示システム単体やセンサー単体を提供するサービスが多いなかで、VACANは混雑の検知から解析、情報配信までを一体的に提供している。検知に必要なAIカメラやIoTデバイスを独自に開発し、解析に用いるAIアルゴリズムも独自設計であるため、施設ごとの構造や運用に合わせた細かな調整が可能である。結果として多様な施設の目的や特性に対応でき、2016年の創業以来、2万以上の公共施設で導入が進んでいる。
実際の導入事例を見ても、活用範囲の広さがうかがえる。たとえば国内の主要8大空港の保安検査場では混雑の可視化にVACANが使われ、利用者の動線改善に役立てられている。商業施設や飲食店では、トイレの混雑可視化や入店時の行列管理に活用されているほか、自治体では避難所の空き状況共有やオーバーツーリズム対策として約300地域で導入されている。いずれも、混雑に関する不透明さを減らし、利用者の安心と運営者の効率化の双方に寄与している点が共通している。
VACANがこうして多くの施設に導入されるようになった背景には、技術力だけでなく、企業や自治体が主催するスタートアップ支援制度やアクセラレーションプログラムに採択されながら、サービスの完成度を高めてきた経緯がある。特にコロナ禍では、密を避ける必要性が高まるなか、混雑の可視化・抑制・管理をワンストップで提供できたことが、施設側からの信頼獲得につながったと考えられる。
創業から10年を迎えようとする今、バカンは「人と空間を、テクノロジーで優しくつなぐ。」というミッションを新たに掲げている。トイレの混雑が分かれば心に余裕が生まれ、周囲にも優しくできるのではないかという思いから生まれたサービスは、これまで多様な空間へと広がり、日常の安心と快適さを支える役割を果たしてきた。今後もVACANの事業拡大とともに、より多くの人にとって過ごしやすい空間が広がっていくことが期待される。