寄付された物を販売し、その収益で職を求める人に職業訓練を提供する
Goodwill(グッドウィル)は、米国とカナダの150以上の地域で大型リサイクルショップを営む非営利団体だ。リサイクルショップとしては国内最大級で人気のあるGoodwillだが、このビジネスの本来の目的は、寄付された物を販売し、その収益で職を求める人に無料で職業訓練や就労支援を行うことだ。その規模も大きく、1年で210万人以上がGoodwillからキャリアアップのためのサービスを受けたり、14万人以上が新たな仕事を見つけている。
Goodwillの始まりは、まだ「ソーシャルビジネス」という言葉もない1902年に、アメリカのボストンで牧師をしていたエドガー・J・ヘルムズ氏が、社会奉仕と信仰に根ざした精神から、貧困層に職を提供するための仕組みとして立ち上げた。単なる慈善事業ではなく、「使わなくなったものを寄付してもらい、それを修理・再販することで雇用を生む」という発想は、当時としては画期的だったようだ。
現在のGoodwillのモデルは、その原点を保ちながらも、規模と仕組みを大きく発展させている。Goodwillのリサイクルショップの店舗数はのべ3,300店舗以上もある。Goodwillが展開されている地域には、それぞれ独立した非営利の自治組織があり、それぞれがリサイクルショップ、寄付センター、キャリアセンターを運営している。そして、それらを束ねる本部組織「Goodwill Industries International(GII)」が、サービス強化支援や連邦助成金の調整、政策提言などを担っている。GIIは各地域の法人から収益に応じた会費を年ごとに受け取り、各地の運営が円滑に進むようにインフラと支援体制を整える、という組織構造だ。
地域の住民から寄付された衣類や家庭用品は、リサイクルショップに併設または別に設けられた寄付センターに持ち込まれる。寄せられた品々は店頭にずらりと並べられ、衣類は一着数ドルからと非常にリーズナブルだ。中にはデザイナーズブランドや未使用品が見つかることもあり、宝探し感覚で来店する人も少なくない。こうした店舗販売から生まれる収益は、ある地域では年間1.5億ドル規模にも及び、非営利団体としては例外的な規模感を誇っている。
こうして得られた収益と寄付金や助成金によって、地域内に設けられたキャリアセンターが運営されている。ここでは、金融、医療、ITなど様々な業界の職業訓練に加え、履歴書の書き方や面接対策の指導、デジタルスキルのトレーニング、資格取得支援、就労先のマッチングといったサポートが提供されている。支援対象は障がいのある人や退役軍人、刑務所出所者、若年無業者など幅広く、パートナー企業やボランティアとともにその支援活動を行っている。業種によっては、大手企業と連携した職業訓練プログラムも展開されており、単なる職業訓練にとどまらない人材育成の面もあるようだ。
2024年時点で、本部組織であるGIIの総収益は約8,700万ドルに達し、そのうち約4,000万ドルが就労支援に充てられている。さらに、全米・カナダに広がるネットワーク全体では、年間売上が50億ドルを超えるとされ、社会的インパクトはきわめて大きい。ある統計によれば、アメリカで雇用された人のうち、約200人に1人が何らかの形でGoodwillの支援を受けているという。
寄付された一着の服が、誰かの新しい一歩を支える。Goodwillのビジネスモデルは、再利用と社会貢献を掛け合わせた、持続可能な仕組みとして多くの共感を呼んでいる。また、Goodwillはその仕組みを寄付金や助成金だけに頼るのではなく、リサイクル事業で得た収益によって運営しているからこそ、100年以上も続いてきたのだろう。