「検索」という日常行動を森林再生の仕組みに変えた
気候変動の影響が各地で顕在化し、森林破壊や干ばつ、生態系の崩壊が連鎖している。経済成長を優先してきた社会は、自然資源の搾さく取しゅに依存する構造の転換を迫られている。異常気象や食料危機が現実の脅威となり、暮らしや企業活動にも波及する中で、日常の行動を環境再生へ結びつける仕組みが求められている。
「Ecosia」は2009年にドイツのベルリンで設立された検索エンジンだ。検索で得られる広告収益を森林再生にまわす仕組みで、日常のオンライン行動を再生の循環に組み替えることを目的としている。創業当初は広告収益の大半をWWFドイツの森林保護プロジェクトなど既存の環境団体に寄付し、熱帯雨林の保全を支援していた。その後、寄付での支援から、現地パートナーとの協働で苗木育成から植樹後のモニタリングまでを行う仕組みへ発展していった。
EcosiaはMicrosoft Bingの検索技術と広告ネットワークを基盤とし、ユーザーの検索行動により広告収益が生まれる。得られた利益の大部分を森林保全や再生プロジェクトに充てる方針を掲げ、事業運営に必要な費用を差し引いたうえで再投資を行う。資金の使途は月次の財務レポートで公開され、収益から現場までの流れが可視化されている。2014年には、環境や社会への配慮、説明責任などの基準を満たしたB Corp認証企業となり、社会的使命を追求する姿勢を外部からも評価されている。
植樹活動は、Ecosiaが各地域の専門団体と連携して進められる。現地のパートナーは気候や土壌に合わせて樹種を選び、植えた後の管理も長期的に続けている。Ecosiaはその活動を契約やデータ報告によって支え、成果を衛星画像などで確認。これにより、単発の寄付に終わらず、植えた木が根付くまで見届ける仕組みが確立された。プロジェクトはマダガスカル、ブルキナファソ、ブラジルなどに広がり、木々はCO2を吸収するだけでなく、土壌や水の回復、農業の安定化にも貢献。森林の再生が地域の暮らしを支える循環を生み出しており、検索で得た収益が地球規模の再生ネットワークとして機能している。
さらにEcosiaは、再生可能エネルギーによる自立運営を進めている。自社で太陽光発電所を建設し、検索サービスに必要な電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと共に、余剰分を電力網に供給。石炭などの化石燃料に依存する電力を実質的に代替することで、CO2排出を相殺し、事業全体で気候への影響を減らしている。こうしてEcosiaは、森林再生での炭素吸収と合わせ、排出される温室効果ガスの総量より吸収・除去される量のほうが多い「カーボンネガティブ」状態を実現している。
検索が生む経済価値が森林回復と再エネ拡大に循環し、環境負荷を減らしつつ新しい価値を生む構造を形づくる。Ecosiaは、テクノロジーの仕組みを社会や自然の再生とつなぐ新しい経済のあり方を提示している。