多くの人が訪れる入場料が必要な本屋
「文喫」は、2018年12月に開業した人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで、約三万冊の書籍を販売する書店。だが、通常の書店とは異なり、平日1,650円の入場料を支払う(土日祝日は2,530円)。店内には、本が並ぶ選書室、一人で本と向き合うための閲覧室に加え、複数人で利用できる研究室や飲食を楽しめる喫茶室などが併設されている。
選書に力を入れており、「1タイトル1冊のみ」というルールがある。どれだけのヒット作であっても、1冊しか仕入れない。従来の書店運営においては、売れなかった本は返品等の対応が必要だった。文喫では、こうした業務にかかる時間と手間を選書や空間づくりに回せるよう、「買い切り」という形式をとっている。書店員は、「なぜ、この本が文喫に必要なのか」を考えながら選書をしているという。1タイトル1冊しかない状態で、3万冊が揃うとなると、本棚を見て回る楽しみも大きい。
選書や空間へのこだわりもあり、文喫を訪れた人の平均3割が1冊以上の本を購入。半分以上の来訪者は飲食をセットで体験しており、平均4~5時間滞在し、平均の客単価は3,000円以上となっているそうだ。従来の書店と比べると、滞在時間や客単価などの数値面における違いも大きい。
書店は年々数を減らしている。だが、本を通じた体験には、まだまだ価値を生み出す余白があるということを文喫は教えてくれる。文喫の挑戦と実績は、書店運営にとって大きなヒントとなるはずだ。