ファミレス業界では珍しく理系出身が多い
浮き沈みの激しい外食チェーンの中で成長を続けている「サイゼリヤ」。行ったことがある人の多くが、メニューの値段が安いことにびっくりする。同業種の中でも低価格で、たとえばサイゼリヤの顧客単価は他のファミレスよりも100円以上安い。イタリア料理の専門家は「使っているのは質のよい食材でおいしいのに、どうしてこの価格で提供できるのか」と驚くらしい。その理由は、大きく2つある。
1つめは、今までやっていたことを見直して経費を抑え、利益率を高めるための取り組みを徹底して行っていること。たとえばメニューの数は減らしていく一方で、強いメニューを1つでもつくることを重視している。例えば売れ筋のミラノ風ドリア299円は定番人気メニューのひとつとなっている(2020年6月、新型コロナ対策で釣り銭を減らすため1円値上げし300円に改定)。メニューを絞り、強いメニューをつくることなどの取り組みを行うことで結果として食材ロスが減り、作業効率もよくなる。無駄を省いたことで出た利益の一部は客に還元するために、また値下げをする。このような流れで客に喜ばれると同時に、店舗も利益が出る関係になっている。
2つめは食材へのこだわり。食材の仕入れに関して、サイゼリヤでは価格の下限ではなくて食材の品質について下限を決めることを重視している。生ハムやサラミなどはイタリアの食品会社と直接契約を交わし、自社で畑を所有して米や作物の一部を育てることもしている。なぜここまで食材にこだわるかというと、味のおいしさの80%は食材で決まるから、と同社会長の正垣泰彦氏は著書で述べている。
そのためサイゼリヤには、飲食業にはめずらしく理系出身の社員が多く、社内では研究開発部門を強化しているという。味を定量的に判断するために科学的な品質評価の仕組みをつくっていたり、店舗の運営を効率化するために専用の調理器具や掃除用具などの商品開発なども行ったりしている。こうして食材の品質にこだわりを持ちながらも無駄を省くことで、おいしい人気メニューを安価に提供するという、一見相反する2つの要素を両立させている。これが競合のファミレスとは違った強みとなっている。