家賃に体験を組み込み、暮らしをデザインする賃貸モデル
台湾ではここ数年、不動産価格の高騰が続き、家を買うのが難しい若い世代が増えている。台タイ北ペイ市では住宅価格が平均年収の十数倍に達し、家賃も上昇の一途をたどっている。多くの人が月収の大部分を住居費に充てざるを得ない状況の中で、「どうせ高い家賃を払うなら、暮らしの質にも価値を求めたい」という考え方が広まり、住まいを単なる部屋ではなく、生活の質を左右するサービスや体験の場としてとらえる意識が強まっていった。しかし、従来の不動産業は「部屋を貸すだけ」の仕組みにとどまり、こうした新しい価値観には十分に応えられていなかった。
この状況に対して、「Alife Holdings」は住まいそのものを体験の基盤として設計し直す発想から生まれた。都市計画やブランドデザインなどを手がけてきた企画会社Plan bのチームが、そのノウハウを活かして2020年に立ち上げたのが、Alife Holdings Co., Ltd.(理想生活控股)である。従来の不動産が空間だけを提供していたのに対し、Alife Holdingsは空間と体験をセットで設計し、暮らし方そのものを提案することを目的とした。
最初の拠点となったAlife FL(士シー林リン区)やAlife WCH(台北駅近く)では、老朽化したビルをリノベーションし、家具付き住居に共有キッチン、テラス、シアタールーム、ワークスペースなどを併設。入居者同士が自然に交流できるような空間づくりが行われた。建物の1階にはカフェやドリンクスタンド、カレー店などを誘致し、入居者にはドリンク提供やサブスクリプション型の優待特典を用意。日常の中に小さな楽しみを織り込みながら、生活空間と商業空間を緩やかにつなげている。
さらに、フリーマーケットや音楽イベント、季節のパーティーなどの企画を運営側が主導し、暮らしに文化的な体験を組み込んだ。これらは単なる入居サービスではなく、日常をデザインする仕組みとして機能している。「部屋を貸す」から、「暮らしを編集する」へ。Alife Holdingsは賃貸住宅の枠を越えた新しいモデルとして注目を集めている。
料金体系にも独自の工夫がある。契約上は、家賃としてではなく、住居利用と企画サービスを一体化したパッケージ料金として設定。入居者は家具付きの部屋の利用に加え、カフェ特典やイベント参加、清掃サポートなど複数のサービスを得られる。この体験込みの家賃という考え方が、Alife Holdingsを他の賃貸と明確に差別化した。家賃をサービスと結びつける発想がまだ一般的ではなかった中、Alife Holdingsは都市生活者にとっての新しい暮らし方の象徴となっている。