貧困層の自立を支援する新たな融資の仕組み
グラミン銀行は、ムハマド・ユヌス博士により、1983年バングラデシュに設立されたマイクロファイナンス機関だ。従来の融資制度では借入ができなかった、貧困・生活困窮者に無担保で融資を行い、ほとんど貸倒れのない実績を上げている。
立ち上げ当初から高い返済実績を実現したのが、独自の融資のスキームだ。借りるにあたって、5人組というグループをつくってくれる人を見つける必要がある。5人のうち、誰かが返済不能となった場合には肩代わりをする。この仕組みはグラミン方式と呼ばれ、通常はお金を貸す際に家や土地などを担保にするが、この方式ではそういった物的な資産を担保にせず、人の相互の信頼関係によって貸倒れを低減させる仕組みとして広まった。
だが、バングラデシュの68%が水没したと言われる1998年の大洪水の折、グラミン銀行の借手の多くも、住宅や畑などに大きな被害を受けた。その結果、返済不能に陥った借手が続出し、経営危機に陥った。これを機に、グラミン銀行は創業時のスキームを見直した。5人組への貸付から個人貸付への転換、返済が困難に陥った場合の返済スケジュールの見直し対応、少額の融資だけでなく多額の融資の提供などに取り組んだ。危機に陥りながらも、あくまでも貧困層向けの融資を続けながら、活動を続けてきた。
グラミン銀行からの融資を受けている人は9割以上が女性だ。借り入れした資金は生活費などに充当するのではなく、起業や就労のための準備資金に充てられる。グラミン銀行の担当者が定期的に借り手のもとを訪れており、これにより借入資金を浪費しないようにしている。グループに対してもトレーニングを実施するなどしており、借りた資金で起業や就労ができるよう支えている。
これらの支援により、グラミン銀行からの融資を受けた借り手は、返済後に仕事に就けるようになっており、貧困層の自立につながっている。この貧困層の自立を支援した功績により、ユヌス博士とグラミン銀行は2006年にノーベル平和賞を受賞した。現在、グラミン銀行はこの仕組みを各国に広げており、日本でもグラミン日本が活動している。相対的貧困という課題の解決に取り組んでいる。
グラミン銀行は、マイクロファイナンスを象徴する特徴的な仕組みを持って生まれつつも、社会や経済の環境の変化にも適応しながら、改善を重ねてきた。その軸となったのは、貧困層を支援し、自立を後押しするという理念だ。仕組みだけを参考にするのではなく、どのような考えのもと作られた仕組みなのかも含めて知ることが重要な事例だと言えるだろう。