「製品を使う人」と「お金を払う人」が別
泥水のような濁った水でもフィルターを通すことで飲用水として飲むことができる「LifeStraw(ライフストロー)」。この商品を開発するVestergaard Frandsen社は先進国のユーザーに向けた用途として販売するのではなく、安全な水を飲むことが困難であるアフリカなどの地域に目を向けることで、ターゲットユーザーを世界的に拡大した。
しかし、LifeStrawを必要としている地域の所得は低く、現地で生活している人々が直接この商品を購入することは難しい。そこで同社は直接売るのではなく、ケニアに住む400万人に対して無償で配布した。これによって住民は安全な水を手に入れられるようになったが、結果的にその地域の環境にも変化が起こった。以前は木を切って燃やし、水を煮沸していたけれど、地域の森林を伐採せずに済むようになった。その結果、CO2削減に大きく貢献するといった副次的効果が生まれた。
LifeStrawの活動は、地球温暖化を防ぐCO2削減や健康指標に寄与する取り組みとして国連の認証を得た。この価値に気づいたCSR(企業の社会的責任)の取り組みに関わりたい企業がCO2削減の実績となる炭素クレジットを購入するようになった。これにより、LifeStrawを必要とする住民が直接購入しなくても、国連や企業の協力を得ることによって必要とされる地域に商品を提供することが可能となった。
このビジネスモデルが興味深いところは2つ。1つめはLifeStrawを「安全な飲み水」で終わらせず、CO2削減に役立つという価値にも着目した点。これによって国連や企業もこのビジネスの関係者となった。2つめは、商品を購入するのが利用者ではなく企業である点。LifeStrawは安全な飲み水の確保とCO2削減の両方に価値があるため、使う人とお金を払う人を分けることに成功し、このビジネスモデルが成り立つようになった。