地域の自然資源をAI技術で活かし、脱炭素と地域活性化を叶える仕組み
デジタル社会を支えるデータセンターは、長らく「電力会社から安定して電気を供給してもらえること」を前提に運営されてきた。データセンターでは、データ処理や保存を行うための高性能サーバーを常時稼働させる必要があり、これらのサーバーは24時間動き続けるため大量の電力を消費すると同時に、大きな熱を発生させる。サーバーの温度が上がりすぎると故障や性能低下を招くため、安定稼働には常時冷却し続ける仕組みが不可欠である。しかし、このような運用は膨大な電力消費を伴うため、結果として多くのCO₂排出につながる。脱炭素が急務となる現代において、データセンターのCO₂排出は、企業の環境目標や社会全体の持続可能性を大きく制約する課題となっている。
こうした社会課題に対し、環境省から第1回「脱炭素先行地域」に選ばれた石狩市は、地域で生み出される再生可能エネルギー(再エネ)を活かし、企業が使いやすい形で提供するためのエリアを整備した。京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)は、この構想に応える形で、CO₂を排出しない電源で稼働する「ゼロエミッション・データセンター石狩(ZED石狩)」を立ち上げ、2024年10月1日にサービスを開始した。
ZED石狩が提供するサービスは、企業・官公庁・自治体などに対し、サーバーを設置・保管するサービスである。サーバーを設置する棚は400台分もの規模があり、データセンターの信頼性の基準で最高ランクの信頼性を備えた堅牢な設計となっている。利用料金については、顧客ごとの個別要件や運用サポートの範囲に応じた体系をとっており、24時間365日人が見守る体制や、運用をすべて任せるサービスの設計を含めた柔軟なプラン選定が可能となっている。
それだけではなく、ZED石狩では、電力使用によって発生するCO₂を植林などで埋め合わせるカーボンオフセットに頼る従来の方法ではなく、電気を使うその瞬間にCO₂を排出しない電源を確保して利用する24/7カーボンフリー電力(1日24時間・週7日、常に再エネだけで電力需要を満たす仕組み)が導入されている。この仕組みは、再エネをリアルタイムで活用する次世代型の取り組みとして、日本で初めて実装されたものである。
この仕組みを支えているのは、独自に開発されたAIによる電力の需給制御システムである。ZED石狩では、再エネとして風力・太陽光・蓄電池の3つを組み合わせて電力をまかなっている。電力の約8割は、株式会社グリーンパワーインベストメントや北海道電力らが石狩湾新港に設置・運営する洋上風力発電によって供給され、残りの約2割はKCCSが自社で運営する太陽光発電所が担っている。AIは、これらの再エネが天候によって発電量が変わることを踏まえ、その変化をリアルタイムで予測する。そして、蓄電池を適切に制御しながら電力を補うことで、24時間365日、再エネだけでデータセンターを安定して稼働させている。
さらに、ZED石狩は、北海道石狩市の冷涼な気候と、地震や津波の影響を受けにくい安定した地盤を活かしたデータセンターである。災害リスクが低いため、サーバー停止やデータ消失などの重大トラブルが起きにくく、長期的に安定したサービス提供が可能だ。気温の低さを利用して効率よくサーバーを冷却できるので、電力消費を抑えられるのも特長である。加えて、サーバー室の排熱を床下空調や地面の雪を溶かすための設備に再利用することで、エネルギーを無駄なく循環させている。こうして、冷却性能と電力の安定供給を両立し、AI学習や大規模データ処理など高負荷な計算にも対応できる設備を備えている。
ZED石狩は、最新技術を導入するだけでなく、「地域の活性化や新しい仕事づくり」という大きな役割も担っている。地域で生まれた再エネを地域で使う「地産地消」の仕組みをつくることで、発電設備の建設・保守、エネルギー管理などの分野で新たな雇用が生まれ、地域経済が自立していく流れを後押ししている。