環境・社会・人に配慮した生産者の取り組みを適切に評価し、消費者へと開示
果物や野菜を選ぶとき、多くの人は価格や見た目だけを手がかりに判断しており、生産の背景までは把握しにくい。近年、有機・フェアトレードの青果物もスーパーで見かけるようになったが、それらが少し高く売られている背景には、農場の土壌や河川への配慮、農業労働者の健康や適正賃金の支払いなど、環境や社会に対する“隠れたコスト”が含まれていることがある。しかし、それらの事情が見えないままでは、消費者は持続可能な選択をしたくても十分な判断材料を得られず、生産者側の環境配慮や公正な取り組みも正しく評価されにくい。こうした課題に対して透明性を高めようとしているのがEOSTAというオランダの企業である。
EOSTAは1990年にオランダで設立された有機・フェアトレード青果物の国際的な流通企業であり、現在は世界6大陸に広がる1,000以上の契約農家と協力しながら、生産から輸入、パッキング、物流、販売までを一貫して支えている。農家には有機栽培の農業指導や資金面のサポートも行い、トレーサビリティの確保にも力を入れてきた点が特徴である。売上は1億ユーロ規模に達し、欧州の有機青果市場では主要なプレーヤーと位置づけられている。供給先はオランダやドイツの大手スーパーをはじめ、アメリカやカナダ、アジアの小売店にも広がっており、国際的なネットワークの中で有機食品を安定的に届ける役割を担っている。
そのEOSTAが消費者向けに展開している有機青果ブランドが「Nature & More」である。Nature & Moreは遺伝子組み換え作物(GMO)不使用、農薬不使用、人工肥料不使用の新鮮なオーガニック果物と野菜を扱い、欧州の主要なスーパーマーケットチェーンやオーガニックマーケットのほとんどで取り扱われている。また、店頭に並ぶ果物や野菜に、作り手の姿勢や農園の取り組み、環境や社会への影響に関する透明性も提供している点が特徴である。
その具体的な方法が、商品ラベルに記載された3桁のコードである。この番号をNature & Moreのサイトで検索すると、生産者の名前や農園の様子、栽培方法、環境保全の取り組みといった情報を確認できる。有機認証だけでは伝わりにくい“作り手のリアリティ”を補う仕組みとして2004年頃から導入され、どこで誰がどのように作ったのかを知りたいという消費者のニーズに応えてきた。
さらにNature & Moreでは、商品の背景をより多面的に理解できるように「サステナビリティ・フラワー」という指標も採用している。これは土壌保全や生物多様性、水管理、地域社会への参加、経済性など、食品の生産が環境・社会に与える影響を花の形でまとめて可視化する指標スキームである。EOSTAがインタビューや農場訪問を通じて生産者ごとに評価と測定を行い、生産者の持続可能な取り組みを開示することで、環境配慮の深さや社会的価値が伝わりやすくなる点が特徴である。
こうした透明性を軸にするNature & Moreのアプローチは、市場でも着実に評価されてきた。EOSTAの売上は有機食品の需要拡大とともに増え、ブランドとしての信頼も高まっている。「安全だから買う」から「どのような価値を選ぶか」へと購買理由が変化するなかで、Nature & Moreの情報提供の仕組みは国内外でサステナビリティに関わる多数の賞を受賞している。生産者にとっても、自らの努力が消費者に伝わることで適正な評価につながりやすくなる点は大きい。
同じ有機認証を持つ農産物でも、その背景には土壌や気候、生産者の哲学といった多様な違いがある。Nature & Moreが行っているのは、それらを分かりやすい形で可視化し、消費者が納得して選べるようにすることである。作り手、買い手、そして環境のそれぞれに無理のない関係を築く取り組みとして、今後も有機食品市場で重要な役割を果たしていくと考えられる。