ケニア政府の輸出優遇措置を活用し、欧米ブランドと協業
近年のファッション産業では、ファストファッションの拡大によって短いサイクルで衣料品の大量生産と消費が繰り返されている。その生産現場は、長らく製造コストの削減を前提に成り立ってきた。結果として、特に生産の下請けを担う発展途上国の製造工場では、低賃金や過酷な労働が起こり、そこで働く人々の貧困を生み出している。加えて、環境への負荷増大や衣服の廃棄も大きな問題として生じている。
SOKO Kenyaは、そうした中で2009年にケニアで設立され、「安さ」ではなく「エシカルさ」を価値にした当時では珍しい服の製造工場だ。幼い頃から社会に蔓延する不平等を疑問視していた創業者のジョー・メイデン氏は、英国のファッション業界で経験を積んだ後、「ファッションにはポジティブな変化を生み出す力がある」という信念をもって、人と環境を最優先にした工場を立ち上げた。少人数で始まった製造工場は、現在は150人の職人を抱え、欧米などのラグジュアリーブランドやアパレル企業の受注を請け負っている。
SOKO Kenyaが重視する「エシカルさ」は、単なる理念ではなく、服をつくる過程に人や環境、地域社会を大切にする仕組みを組み込んでいる。例えば、従業員には暮らしに十分な賃金が支払われ、託児所や医療といった福利厚生が整えられている。また、工場の建築には自然素材を使い、ソーラー発電や雨水利用などを取り入れることで、環境への負担をできる限り減らしている。さらに、慈善信託であるSOKO Community Trustを設立し、地域の人々が縫製スキルを習得できるStiching Academy(縫製アカデミー)やビジネス、金融リテラシーを学ぶ機会を提供している。こうした取り組みで、雇用の創出だけでなく、地域全体の自立につなげている。
そしてビジネスモデルの面では、SOKO Kenyaはケニア政府が輸出を促進するために設けた輸出加工区(Export Processing Zones )に進出しており、生産品の80%以上を海外に輸出することを要件に、法人税の10年間免除や原材料等輸入にかかる関税免除といった優遇措置を受けながら、海外ブランドと協業しやすい体制を築いている。また、SOKO Kenyaでは単に衣服を製造するだけでなく、ケニアの素材や職人技を取り入れるデザイン提案を行ったり、設備の整った広い工場での大規模生産も可能で、最高水準の品質管理も行われている。そのため、エシカルでありながら高品質な衣服を大量生産できるとして、欧米や豪州のラグジュアリーブランドや大手アパレル企業に選ばれている。こうして倫理と経済の両立を実現している点が、SOKO Kenyaのすごさである。
SOKO Kenyaの歩みは、衣服を製造するという行為が人や環境、そして地域を支える営みになり得ることを示している。搾取と浪費の構造に代わるもう一つの選択肢を提示しながら、世界のファッション産業における新しい基準をつくりつつある。