廃棄物選別施設をまるごと設計・運営し、リサイクルの経済構造そのものを変える
長年にわたり、アメリカのリサイクル率は約32%にとどまり、この15年間ほぼ横ばいの状態が続いている。アルミ缶で約43%、ガラスで約31%、プラスチックに至ってはわずか5%しかリサイクルされておらず、背景にあるのは選別コストの高さという構造的な問題である。リサイクル施設(MRF:資源回収施設)では、コンベア上を流れる廃棄物を作業員が目視で判別し、手作業で仕分けるのが一般的だった。この作業は過酷で、作業員の離職率は3か月で約50%に達するとされる。人が入れ替わるたびに教育コストが発生し、選別の精度にもばらつきが生じる。1トンあたりの処理コストは100〜120ドルであり、結果として「リサイクルするより埋め立てた方が安い」という経済構造が定着していた。
こうした状況を変革しようと2014年に設立されたのが、コロラド州ルイビルに本社を置くAMP Robotics Corp.(以下、AMP)である。創業者のマタニヤ・ホロウィッツ氏はカリフォルニア工科大学でロボット制御やコンピュータビジョンを研究した後、リサイクル施設を訪問した際に手作業中心の選別現場に機械学習とロボティクスの適用余地を見出して起業に至った。AMPはAIによって廃棄物の種類を瞬時に識別し、ロボットアームや空気噴射を用いて廃棄物を自動で仕分ける一連のシステムを開発した。熟練の作業員を上回るスピードと精度でプラスチック、紙、金属、段ボールなどを24時間体制で選別するソリューションを提供している。
AMPのコア技術は深層学習を用いた独自のAIプラットフォームである。カメラがコンベア上の廃棄物をリアルタイムで撮影し、AIが色・形状・質感・ロゴなどのパターンを認識して素材を判別する。識別された素材はロボットアームやエアジェット(空気噴射装置)によって高速で仕分けられる。回収率は90%以上を達成し、人手による選別を大幅に上回る精度と速度を実現している。AMPのAIプラットフォームはこれまでに2,000億個以上の廃棄物を識別し、280万トン以上のリサイクル素材の選別を支えてきた。
当初AMPは、既存のリサイクル施設にロボットを導入する形で事業を展開していた。しかし近年はビジネスモデルを大きく転換し、AIを活用して施設全体を設計・運営する「AMP ONE」という統合型ソリューションを主力に据えている。AMP ONEは年間1万〜100万トン以上の処理能力に対応し、受注から稼働開始まで12か月以内で完了する。廃棄物の処理量に応じてトン単位で課金する収益モデルを採用しており、顧客は大規模な設備投資を行わずにAI選別施設を利用することができる。従来の施設と比較して処理コストを30〜50%削減し、設置面積も最大75%縮小できる。北米・アジア・欧州で400以上のシステムが既に稼働している。
資金調達面では、2024年12月にシリーズDで9,100万ドルを調達し、累計調達額は約3億7,700万ドルに達している。2025年11月には、バージニア州南東部の広域廃棄物処理機関SPSAと20年間で総額約4億5,000万ドルの契約を締結した。年間54万トンの都市ごみを処理し、埋立量を半減させる計画で全米最大規模のリサイクルプロジェクトとして注目されている。
AMPが示しているのは、「リサイクルは採算が合わない」という長年の常識を技術で覆す可能性である。住民にごみの分別を求めるのではなく、混合ごみのままAIが選別する仕組みはゴミの分別とリサイクルそのものを再定義している。埋立地の延命と資源回収の経済性を両立させるこのモデルが各地に広がれば、停滞してきたアメリカのリサイクル率を構造的に押し上げる起点となり得るだろう。