優良ドライバーほど得する仕組み
日本でも都市部を中心に浸透してきたカーシェアリング。近年、その手軽さからレンタカーやタクシーの代替手段として魅力と感じている個人や法人ドライバーの会員登録者数が増えている。この業界で高いシェアを誇る「タイムズカープラス」を運営するタイムズ24株式会社は、もともと駐車場事業を展開していたこともあり、車を利用するためのステーション確保に優位性があった。2018年時点でタイムズ24は1万7000台以上の車両をサービスに活用しており、2位の約2600台と比べて圧倒的に高いシェアを持っている。
カーシェアリングは対面接客がないオンラインサービスなので24時間気軽に利用できる。その反面、不特定多数の人が同じ車を使うため、利用時間の違反や車内の汚れなどサービスの質の維持が問題となりがちだ。しかし、同社はIoTやGPSを活用して、車両や利用状況から得られるデータに基づくポイント制を用いることでマナーの良い使い方をするドライバーが好条件を受けられるようにして、優良ドライバーの確保と高いサービスの質を保つ仕組みを実現している。たとえば、利用中の給油やエコドライブなどを行うことで利用者のポイントが加算され、割引などに反映される。また、ポイントのステージが上がると受けられる特典が変わり、たとえば、予約が2週間前ではなく3週間前からでも可能になる。ドライバーにとっては大きい差なので、ポイントを集めたくなる仕組みだ。
ポイント加算とサービスの関係がよく練られていることにも感心する。同サービスの使い方を学べるEラーニングを受けるとポイントが得られるが、そこであまり知られていない便利なサービスの認知度を高めたり、安全運転のアドバイスなどにつながり、結果として優良ドライバーを育成する流れをつくっている。このような積み重ねが、サービスの質を高めることにつながっている。
当然、ドライバーの行動は同社のデータに蓄積される。最適な車の配置を計画したり、利用者の行き先などの情報はマーケティングに役立てられ、さらによいサービスを提供する、といった好循環をつくっているところが、このビジネスモデルの興味深い点だと思う。