世界中の建設機械をモニタリング
「KOMTRAX(コムトラックス)」は、世界第2位の建設機械メーカーであるコマツの機械稼働管理システムのこと。ブルドーザーなどの建設機械に、GPSとその他のセンサーをモニターし、発信するユニットを組み込んでデータを送出することで、どの機械がどこにあって、エンジンの動作有無、燃料の残量、機械の稼働時間や稼働率などが、コマツのオフィスでわかるようになっている。
KOMTRAXは、建設機械の管理主体をユーザーからメーカーに移行するとともに、コマツを建設機械の売り切りというモノビジネスから、情報サービスへとビジネスモデルを変化させた。KOMTRAXは日本のIoT先行事例としてとらえることもできる。
1990年代、中国で建設機械の盗難が横行、日本でも盗んだ油圧ショベルでATMを破壊する事件が多発し、その対策が検討された。その際、飲料メーカーが自販機のデータ送信により遠隔でどの製品がどれだけ消費されているかモニターしていることなどを参考に、GPSの位置情報を発信することに。そして、1998年にエンジンやポンプのコントローラーから情報を集めてコマツのセンターにデータを送る仕組みを開発したのがKOMTRAXの始まりだ。その後、500m移動するとお知らせメールが飛び、サーバーからエンジンを停止し、盗んだ機械が動かせなくなるようにしたことから、コマツの機械は盗まれにくいという評判が高まった。
KOMTRAXによって部品の状況が常時モニターされると、故障が起こる前に手が打てたり、機械を長持ちさせたりでき、コストの削減につながる。顧客に対しては、機械の使い方のデータからオペレーターのスキルの良し悪しを見抜き、スキルアップのためのアドバイスや、工賃や経費の削減などの踏み込んだ提案ができるようになった。それにより、「コマツでないと困る」という声が高まり、ビジネスがより強固になった。さらに、コマツは世界のどの地域でどの程度機械が稼働しているかという情報をもとに、需要予測や生産計画など、経営にKOMTRAXデータを活用している。