糖尿病患者の足を守るスマートソックス
糖尿病が進行すると、高血糖による免疫力の低下のほか、足の血管が細くなる末梢動脈疾患や、足の感覚が低下する末梢神経疾患を併発することもある。末梢動脈疾患によって血流が悪くなると、足の潰瘍や感染にかかりやすくなるとともに、傷や炎症の治りが遅くなる。
また末梢神経障害が起きると、痛みや痒みを感じにくくなるため、傷や潰瘍に気づかないまま放置してしまいがちになる。血流障害や、傷や皮膚病などからの感染症による壊疽(組織の死)が進行し、気づいたら下肢の切断が必要になるまで重症化していたということも起こりうる。
全米では 推定3,840万人の糖尿病患者がおり、そのうち年間16万肢が、糖尿病を原因とする切断手術を余儀なくされたものだ。下肢切断に至る重症化を防ぐためには、傷や潰瘍などを早期に発見してケアすることが必要になる。
それには、糖尿病患者の足の温度を定期的にモニターし、炎症による温度変化を捉えることが、有効な手段と考えられている。炎症は、下肢切断に至る壊疽を起こす潰瘍の先行となる兆候だからだ。
また、糖尿病神経障害は、最初に足先から始まり徐々に足の上部に向かって進行するケースが多いことが、足の温度をモニターする理由だ。
これまでは、目視によって傷がないか、皮膚病にかかっていないか、火傷やむくみがないかなどをチェックするだけだったが、モニターが可能になれば、より一層炎症や、そのもととなる傷などに対して行き届いたチェックが可能になる。
Siren Careが開発した「Siren Socks」は糖尿病患者向けの靴下で、履くだけで生地に付けられた6カ所のセンサーから足裏の温度を測定して、付属の「Siren Hub」と呼ばれる専用のコンセント型通信機に温度情報を送信する。
その温度情報は、コンセント型の通信機を通じてSirenの認定医師および看護師に送られる。温度情報は看護師がモニタリングしており、もし、炎症の可能性となるような温度変化が検知されたら、利用者は医師から電話で通知を受け取る仕組みだ。
靴下には、温度計測センサーを織り込んだNeurofabricという(IoT)生地が使われていて、バッテリーとBluetoothの機能が搭載されている。バッテリーは充電不要で、なおかつ洗濯が可能であるため、通常の靴下と同じように使用しながらアプリで足の温度変化を管理することができる。
バッテリーの寿命は約1年。靴下は経年劣化のサイクルに合わせて新しいものが送られてくる。
「Siren Socks」以外にも、これまで糖尿病患者の足の炎症を検知する製品はあった。靴の中敷で測定する「SurroSense Rx」や、ブーツ型の「PressureGuardian」だ。両者は温度ではなく、圧(Pressure)をモニターするものである。「Siren Socks」は靴下であるため、扱いやすい。
また金額は、月額$20ほど(2021年時点)。加えて、Siren Socks は医療保険が適用できる点は、利用者にとって大きなメリットといえるだろう。皮膚の温度を測定するならば、靴下の繊維にセンサーを埋め込んだSiren Socksは、センサーが皮膚に直接触れるため、より信頼性の高いデータが得られるものと思われる。
Siren Careによれば、足の温度をモニターすることで、潰瘍のリスクを70%以上軽減することができるという。「Siren Socks」を使用し、炎症を検知することで、下肢切断に至るような糖尿病の重症化が予防できるとともに、生活の質を維持しながら、糖尿病患者の寿命を延ばすことが期待される。