〝援助〞から〝事業〞へ。金融の流れを変える日本発の挑戦
途上国では多くの人が銀行口座を持てず、必要なときにお金を借りられない状況がある。特に農村に暮らす人や女性は、生活や小さな商売を続けるための資金を手に入れたり貯蓄を行う方法が限られ、安定した暮らしを築くことが難しい。こうした金融サービスから取り残された状態は貧しさの原因の一つとされ、長く社会課題として語られてきた。少額の融資を受けられたことで商売を続けられたり、子どもを学校に通わせられるようになったという例も多く、金融へのアクセスを広げることが、人々の生活や地域経済を支える大きな力になると考えられてきた。
この課題に向き合うために日本で生まれたのが「五常・アンド・カンパニー」である。誰もが自分の未来を決めることができる世界を目指し、途上国の低所得者層に少額の融資や貯蓄の機会を届けるマイクロファイナンス事業を展開している。単にお金を貸すだけでなく、金融サービスを使えなかった人々が、自らの意思で選択し、生活をよりよくできるようにすることを目的としている。
歴史的に金融包ほう摂せつの取り組みは、寄付や公的資金に頼る形で行われてきたが、事業としての継続性に課題があった。五常・アンド・カンパニーをはじめとするマイクロファイナンス機関はそこに民間の資本を導入し、社会的意義と経済的持続性を両立させる仕組みを設計した。
同社は日本や海外の個人、企業、金融機関などから資金を集め、そのお金をもとに海外の中小規模の金融機関に出資し、その経営を支援する。現地の金融機関は、金融サービスを受けにくい農村部に暮らす人や、小さな商売を営む女性などに少額の融資や貯蓄の機会を提供し、返済に含まれる利息や手数料を次の融資や事業拡大の原資にまわす。この循環が生まれることで、金融が届いていなかった層にも新たな資金の流れが生まれ、地域の低所得者層の所得向上や自立につながる。
このモデルは一見シンプルだが、構造的に見ると複数の革新がある。第一に、与信リスクを(グループ連帯責任や少額融資といった仕組みで)分散しながらも社会的インパクトを拡大できる点。第二に、収益を生む仕組みを社会課題の解決に直結させている点。そして第三に、現地パートナーの自立を前提にしている点だ。五常・アンド・カンパニーは各国の文化や制度の違いを尊重しながら現地経営陣と共に運営方針を決め、トップダウンではなく協働によって事業を広げてきた。
また、設立当初からグローバルな視野を持ち、アジアを中心に複数の国で事業を展開してきたことも特徴的だ。多国籍メンバーによるフラットでオープンな組織文化を重視し、現地の生活や慣習を理解したうえで、国ごとの制度や市場に合わせて柔軟に事業モデルを適応させてきた。これにより、各国で異なる課題や環境の中でも、共通する理念のもとに持続的な金融の仕組みを根付かせている。
五常・アンド・カンパニーは民間資本を活かし、社会課題の解決と事業の持続性を両立する仕組みを構築。金融包摂を軸に誰もが自分の未来を選べる社会の実現を目指し、途上国での地域密着型マイクロファイナンスを水平統合しグローバル展開する新しい金融の形を提示している。