共創で環境問題を解決する小さなアクションを大きなムーブメントに
プラスチックは軽くて丈夫で加工もしやすく、私たちの生活を支える素材としてあらゆる場面で使われている。一方で、大量のプラスチックごみの発生による環境負荷が大きいことから、近年はリサイクルが積極的に行われ、日本のプラスチックのリサイクル率は89%と言われている。しかし、リサイクルに回ったプラスチックのうち、新しい製品の材料や原料に生まれ変わるのは25%にすぎず、残りは焼却による熱回収(サーマルリサイクル)に回され、結果としてCO2排出の問題を抱えている。また、世界でみるとプラスチックのリサイクル率は9%と推定され、不法投棄などによる海洋ごみの原因となっている。
そうした背景から、2019年に生まれたのがmymizu(マイミズ)である。mymizuは、一般社団法人Social Innovation Japanが開発・運営する無料の給水アプリだ。ユーザーがマイボトルを持って外出し、アプリ上で最寄りの給水スポットを探すことで、ペットボトルを買わずに無料で給水できる仕組みを提供している。アプリ内では、ユーザーが給水によって削減できたペットボトルの本数やCO₂排出量などが可視化され、お得に楽しく環境に貢献できるようになっているのが特長だ。マイボトルの活用が進むことで、ペットボトルを通じたプラスチックの使用が減るであろうことが見込まれている。
給水スポットは、無料で利用できる公園の水飲み場や湧水だけでなく、全国のカフェやレストラン、ホテル、スポーツセンターなどの店舗や公共施設も登録されている。スポットに登録されている店舗や施設は「給水パートナー」として、来店者に無料で飲み水を提供する一方で、来店者の増加や宣伝効果を得られる仕組みだ。こうしたパートナーシップに支えられ、給水スポットは国内外で20万カ所以上、給水パートナーは2,500店を超え、街の中に小さな共助のネットワークが広がっている。
このアプリだけでも興味深いが、mymizuの取り組みはアプリ運営にとどまらない。企業や自治体、教育機関といった多様な組織と共創しながら、環境アクションを広げるイベントやキャンペーンを展開している。
たとえば、名古屋市とは「2R推進プロジェクト」を通じて市民モニターの給水記録を集め、地域のプラスチック削減を可視化する取り組みを行った。また、NIKE Japanとはランニングイベントと連動した給水キャンペーンを実施し、参加者が走りながらマイボトル給水を体験できる仕組みをつくった。さらに、東京大学とは「Campus Changemakers Summit」を開催し、学生が給水文化やサステナビリティのアイデアを議論する場を設けるなど、教育現場での協働も広がっている。
なお、mymizuを運営するSocial Innovation Japanは、企業や団体向けにサステナビリティに関する講演・ワークショップを提供したり、コラボイベントを企画したり、個人・法人向けにマイボトルのデザインや販売をすることで、収益を得ている。加えて、「水を通して社会課題を解決する」という共通の目標を持つ企業からの継続的な支援や、イベントやキャンペーン毎の協賛金、そして寄付や助成金も得ながら活動している。
mymizuは、環境問題を解決するための「個人の小さなアクション」を提案しつつ、それを企業や組織と共創して「社会の大きなムーブメント」へとつなげている点が魅力的だ。アプリダウンロード数は5年で50万を超えた。今後もさらに大きくなりそうだ。