寄付や施しに頼らない支援ビジネス
「ビッグイシュー」は、ホームレス(路上生活者)の自立を応援する目的でつくられた雑誌。イギリスを発祥とし、日本を含む世界各地で販売されている。ホームレスは路上などで雑誌を手売りするという役割を担い、売上の一部が取り分となる。1冊あたりの額は小さいけれども、取次(書籍・雑誌の問屋)を介さないため、通常より多い50%もの取り分が販売者に返ってくる仕組みになっている。
現在は1冊350円で販売されていて、そのうち180円がホームレスの収入になる(2020年4月から金額が改訂され、1冊450円、そのうち230円が収入)。2018年4月時点では、795万冊が販売され、11億円以上もの金額が販売者であるホームレスに提供されているというからすごい。
このモデルがすごいのは、ホームレスを救うために寄付や施しをするのではなく、あくまでビジネスの協力者としたところ。僕たちは社会的弱者に対して「助けてあげる」という感情を持ってしまいがちだが、ビッグイシューではホームレス自身が仕入れて自分で販売する。つまり自助による経済的自立を実現している。販売ルートに関しても、普通のビジネスではできるだけ増やすのが王道だけれど、「ホームレスを援助する」という目的を達成するため、販売できるのはホームレスに限られている。
日本版ビッグイシューの創刊者は、創刊の際に周囲の大反対にあったそうだ。そうした障害を乗り越えてきたパッションにも感動する。ただ、ここ10年で路上生活者は1万8564人(2007年)から5534人(2017年)へと7割減り、同時に販売者の数も3割ほど減ったという。「ホームレスが減る」こと自体はこれまでの活動の成果でもあるので、これを彼らは「ビッグイシューのジレンマ」と呼んでいるそう。
一方、最後の販売者が卒業するまで安定的に雑誌を発行できるよう、販売者がいない地域の読者に向けて定期購読制度をはじめており、2019年3月までに1000人、いずれは3000人を目標に定期購読者を募っている。