別荘体験を開放する、不動産とホスピタリティを融合した事業
日本のリゾート会員権市場は約4000億円規模にのぼり、別荘や宿泊施設への潜在需要は大きい。しかし、現実には一部の富裕層に限られ、別荘を1棟丸ごと所有していても利用日数は年間わずかにとどまるケースが多く、豊かな地域資源が十分に活用されていなかった。一方で、暮らしや働き方の多様化により、都市と地方を行き来するなど新しいライフスタイルへの関心が高まっていた。長期滞在やセカンドハウスを求める声は強まるものの、既存の別荘や宿泊施設では利用機会が限られ、持続的に使う仕組みも整っていなかった。こうした状況を背景に「世界中にあなたの家を」というビジョンを掲げて生まれたのが「NOT A HOTEL」である。
同社は世界的建築家やクリエイターが手がける、絶景が舞台のハイエンドな別荘を完成前にCGパースでオンライン販売。最小単位年間10日分から、自分のライフスタイルに合わせ必要な分だけ購入できるシェア購入のモデルを構築。セカンダリーマーケットプレイスの運用も開始し、物件の引き渡しから3年経つと売却がいつでも可能に。オーナーにとっては安心して資産を流動化できる環境を、購入希望者にとっては新たな取得機会を提供している。従来の不動産販売では困難だった柔軟性を備え、リゾート会員権市場の代替・進化系としても位置付けられる。
同社の第1号プロジェクト・宮崎県青島の拠点「NOT A HOTEL AOSHIMA」と栃木県那な須すの「NOT A HOTEL NASU」では完成前にCGパースのみで販売し、販売開始約2か月で40億円の売上。銀行融資に頼らず前受金で着工資金を確保する手法は不動産開発の常識を覆した。さらに、オーナーは自身が所有する物件以外の全国拠点も相互で利用でき、ネットワークとして多拠点生活を楽しめる仕組みが広がっている。
価値を支えるのは、土地選定から建築設計、販売、ホテル運営や食体験までを一貫して社内で担う体制。建築デザインには世界的建築家であるBビャルケjarke Iインゲルスngels Groupや藤本壮介氏らを起用し、唯一無二の圧倒的な空間を創出。個人には負担の大きい建物の維持や保全、管理を同社のグループ会社が担い、オーナーは別荘のメンテナンスから解放される。2020年の創業から5年で9拠点の開業を実現し、2025年9月末時点では累計契約高559億円・オーナー数1023名を達成。さらに同社はWeb3領域にも踏み込み、未使用日の宿泊権をNFT化して販売。NFTユーザーは不動産購入を伴わず体験にアクセスできる。独自トークン「NOT A HOTEL COIN(NAC)」も発行し、保有者はNACを預ければ実質無料で宿泊できる新しい仕組みを取り入れている。
NOT A HOTELは、所有・運用・デザインに加えNFTやトークンといった仕組みも組み合わせつつ、不動産業界の枠を越えた事業へ進化している。それは新しいライフスタイルを提示する事業であり、進化の行方に注目が集まっている。